ハイハイと乳前歯の外傷 | ナス動物病院

ハイハイと乳前歯の外傷

カテゴリーwhatsnew役に立つ歯のお話

 

 Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀 
 
 転んで乳前歯を打ち陥入や脱臼などの外傷は、
 ヨチヨチ歩きを始めた1~2歳児に多い。
 まだ十分、体のバランス機能が育っていないためだろう。
 不思議なことに、同じ子どもが転倒を繰り返し、歯科医院を訪れる。
 さて、前歯の外傷が多発する理由として、転んでもとっさに手が出ないことが
 あげられる。
 しかし、年配の養護教諭は「昔の子ども達は転んだら絶対手が出ていた。」と
 口をそろえて言われる。
 「転んで手が出ないのは、ハイハイが少なくなったため」という説もある。

 それでは、ハイハイが少ないとどうして手が出ないのだろうか?
 こんなことを考えると、小児歯科を志すものとして楽しくなる。
 さて最近、生活の欧米化とともは机やイスが増えたため、つかまり立ちを早く
 するようになったと言われる。
 一方、かつての日本家屋は、畳の生活が中心で、つかまるものがなかったから
 ハイハイが多かった。

 そこでハイハイとつかまり立ちの関係について調べていたら、
 面白いことに気がついた。
 さて読者の方は、「ハイハイ」と「つかまり立ち」では、どちらが先だと思わ
 れるだろうか?
 当然のごとく「ハイハイ!」と答えられると思う。
 ところが・・・だ。
 海外の文献を見ていると、「つかまり立ち」の方が先なのである。
 まさに生活習慣の差が、子どもの発達に影響していることがわかる。
 さて、話は戻る。

 ハイハイが多いと、手が出る理由。
 ハイハイは、顔を前に向け頭を出しながら、手が床についている姿勢である。
 すなわち頭部が、不安定な位置にあるときには、手が前に出ていることがわか
 る。乳児期にハイハイを行う中で、自然にこのような反射が脳に構築されるの
 だろう。だから転ぶ際、頭部の位置が不安定となったとき、瞬間的に手が出て
 顎・顔面が防御される。

 でも、ハイハイの時代は、もう卒業したから、いまさら・・と思われるだろう。
 大丈夫。
 家庭で“おウマさんごっこ”をして遊べばよい。
 これで新たな反射を作り出す。
 とりあえず、ツバを指につけ眉に当てながら、よく転ぶ子どもの保護者に話し
 ていただきたい。