歯周・口腔内炎症疾患

猫の歯肉口内炎

原因とメカニズム

猫がなぜ歯肉口内炎になるのか、はっきりとした原因はまだ解明されていません。
しかし、歯周炎と同様、歯垢や歯石に付着して増殖する細菌が関わっていると考えられています。

また、猫白血病ウイルス(FeLV)や猫免疫不全ウイルス(FIV)、猫カリシウイルス(FCV)などのウイルスが
原因のケースも多く、猫たちの免疫力、抵抗力の強弱が

細菌感染やウイルス感染などと微妙にからみあい,

歯肉口内炎、歯周炎、歯頸部吸収病巣という病気を併発します。

最も効果的な抜歯療法

治療といっても、基本的には対症療法になります。

たとえば、歯垢・歯石の除去や口腔内の洗浄抗生剤

免疫力を抑制して過剰な抗体反応を抑えるステロイド剤

逆に免疫力を高め、抗炎症作用のあるラクトフェリン

免疫力を調整するインターフェロンなどの単独。
あるいはレーザー治療などです。

それらのなかで、最も治療効果の高いのは抜歯治療です。
それもすべての臼歯(全臼歯抜歯)、あるいはすべての歯(全顎抜歯)を抜歯する治療法です。
前述のいろいろなクスリの使用においても、抜歯治療をしてからではないと、効果が持続しません。
来院する猫の中には、長期間のステロイドの内服によって糖尿病やクッシング病などの副作用を発症している子もいます。

歯がなくなれば、歯肉口内炎を悪化させる細菌が無くなるために、

抜歯後、症状が改善され数週間から数カ月でほぼ正常な状態にもどるケースが70%と言われています。

しかし注意すべきことは、全臼歯抜歯、全顎抜歯をするには専用の手術設備と高い技術が要求されます。
また、長時間、麻酔をかけて手術するため、猫自身にそれに耐える体力が必要です。
以下に、全臼歯抜歯、全顎抜歯の写真を掲載します。

■症例1 全臼歯抜歯(術後)

■症例2 全臼歯抜歯(術後)

■症例3 全臼歯抜歯(術後)

■症例4 全臼歯抜歯(炭酸ガスレーザー使用 右端は一ヶ月後の様子)

■症例5 全臼歯抜歯(右端は1ヵ月後の様子)

■症例6 全額抜歯

歯瘻(しろう)

歯瘻とは、歯の疾患に由来する化膿性病巣が、口腔粘膜や皮膚に穴を開けた状態をさします。
歯瘻は内歯瘻と外歯瘻に区別され、歯周炎から根尖膿瘍を形成して瘻孔を形成する場合が多いです。

内歯瘻とは歯の疾患に由来する化膿性の炎症が口腔粘膜に瘻孔を形成する場合です。

症例1 猫の内歯瘻

症例2 犬の外歯瘻

外歯瘻とは炎症が皮下組織に波及し皮下膿瘍を形成する場合を言います。
症状に応じて、歯内療法や抜歯を行ないます。

上顎の第4前臼歯の歯根膿瘍が原因で眼下の皮膚の欠損部が認められます。

口鼻瘻管

歯周病などが原因で口腔と鼻腔を隔てている歯槽骨が破壊されて、口腔と鼻腔が貫通する疾患です。

口腔と鼻腔とを隔てる骨の厚さは、大型犬で約2mm、中型~小型犬で約1mmと想像以上に薄く、

骨が破壊されると、容易に穴が開いてしまい、貫通してしまいます。

すると、クシャミや鼻汁、鼻出血などの症状が見られるようになります。

クシャミが止まらない場合は、この口鼻瘻管であるケースも意外なほど多く
治療としては、抜歯を含む、口腔外科手術です。

歯肉増殖症

歯肉増殖症とは歯肉の増殖によるもので、歯垢が存在することによって慢性炎症性反応として発症しますが、コリーやシェルティーに多発する傾向があるために遺伝的な要因もあると考えられています。
治療としては増殖歯肉を切除し歯肉整形をすることです。

好酸球性潰瘍

猫の好酸球潰瘍は限界明瞭な病変で上唇に好発する。
大きさは様々で、赤褐色の潰瘍性病変が特徴です。
一般に病変は無痛性です。
中年齢期のメスに多く認められます。
原因は不明ですが、アレルギーの関与が考えられています。

猫の破歯細胞性吸収病巣(ネックリージョン)

歯周病に次いで多く認められる、猫に特有の病気です。
歯周組織に存在する破歯細胞によって、自分の歯を壊していく原因不明の病気です。

症状としては人の虫歯のような感じです。
診断はプローブでの触診や歯科用レントゲン検査で行います。
治療の目的は痛みを和らげ、病巣の進行を防ぐことです。
具体的には、歯冠修復・抜歯などです。

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