役に立つ歯のお話

歯石除去における麻酔の必要性

簡単にお話しすると、麻酔をかけない歯石除去はありえないというお話です。
 

アメリカ獣医歯科学会
アメリカとカナダでは、獣医師の資格を持たない人が歯科処置を行ったり、監督下で訓練された動物看護士が、獣医のライセンスのない施設で診療行為をすることは、法律で禁じられ、罰則が科せられます。
アメリカでも、訓練を受けていない人、あるいはライセンスを持たない人が、動物に対する口腔内の診療行為を無麻酔で実施することの危険性を以下のように説明しています。
 
1)歯石は歯面に硬く付着しています。歯石を取るためのスケーリングは、超音波スケーラーや音波スケーラー、さらにハンドスケーラーを使って行われますが、ハンドスケーラーの先端は鋭い状態でないと歯石を除去できません。動物がちょっと頭を動かしただけでも動物の口腔粘膜を容易に傷つけるばかりでなく、動物が痛みを感じた反応で、術者を咬むこともあります。
 
2)専門家によるスケーリングとは、歯肉縁の上下を問わず、ついた歯垢や歯石を除去し、歯面を研磨することです。スケーリングで必ずしなくてはならないことは、歯周疾患が活動的であるポケット内(歯肉と歯根の間の歯肉炎直下)の歯面をきれいにすることです。ヒトの場合は患者が協力するので、無麻酔でも口腔内の専門医である歯科医によるスケーリングが可能になるのです。しかし、無麻酔で、犬や猫の一本一本の歯の縁下部のスケーリングは不可能です。目で見える範囲の歯石を除去することは、動物の健康維持にはほとんど効果がなく、きれいにしたような感じがするだけです。単に見た目だけの効果しかありません。
 
3)カフ付きの気管チューブを挿管して吸入麻酔をすることは、3つの重要な利点があります。1つは、手技を理解できない動物を協力的にさせること、2つは検査時や施術中の患部組織の治療に際して発生する痛みを排除できること、3つは誤嚥から気道や肺を守ることです。
 
4)専門的なスケーリング施術時に、口腔内検査は必要不可欠ですが、これは無麻酔では不可能です。特に、舌側の歯面を検査することはできませんし、患部や不快感をもたらすか所を容易に見逃してしまうでしょう。
イヌやネコに安全に麻酔あるいは鎮静処置を施すためには、動物の健康状態を評価し、身体の大きさに合わせて適切な薬用量を決め、継続してモニターする必要があります。
獣医師は、以上のすべての手技に精通しています。獣医師でない者が麻酔薬や鎮静薬を処方することも投与することもとても危険であり、違法です。麻酔は決して100%安全とは言い切れませんが、今現在の一般的臨床医が実施している麻酔技術や健康状態の評価法は、リスクを限りなく小さくしているので、毎年、何百万回の歯科処置を安全に実施できているのです

カバの大あくび

今回は私のお気に入りのコラムから。

□Dr.オカザキのまるごと歯学          岡崎 好秀 先生
 
 カバは、水の中に住む草食動物である。

 日中は水中に潜み、夜間になると上陸しエサを食べる。

 一見すればおとなしそうに見えるが、神経質で凶暴な動物である。
 
 アフリカでは、カバに襲われ死亡する者が後をたたない。

 ところで、カバは大きな口を開けている光景を目にする。

 これを見て“カバの大あくび”と揶揄される。

 おかげでむし歯予防週間には、各地の動物園でカバの歯磨きが行われる。

 ところでカバは、どうして大あくびをするのだろう?

 実はこれ、威嚇行動の一種である。

 カバは、縄張りをおかされると、相手に攻撃をしかけるのだ。

 面白いことにカバ同士の争いは、どちらが大きな口を開けるかにかかってい
 る。

 大きな口を開けた方が勝ちなのである。

 負けた方は、口を閉じ。

 勝った方は、さらに大きな口を開ける。

 なんと150度も開くという。

 だから動物園の行楽客に口の中を見せることは簡単とのこと。

 雄のカバの目の前で手を上げると、負けじと大きな口を開ける。

 手を上げている間は、口を開け続けるのでじっくり観察できるのだ。

 さて、そのあくびも大きな牙を見せつけるためのものである。

 牙を見せる事で、己の強さを強調している。

 最初は小さな口だが、クチビルをまくりあげると同時に牙をむき出し、口を開
 く。

 そうすると歯が飛び出すように見える。

 大きな口を開けることで、互いが傷つく争いを避けているのだ。

 さて動物園の動物は、食欲が低下すると、口の中に問題があることが多い。

 数年前、獣医師から依頼され某動物園へカバの往診に行った。

 カバの口をよく診ると歯グキが腫れていた。

 カバの前歯や牙(犬歯)は無根歯であり、生涯歯が伸び続ける。

 このため歯が適度に摩耗しないと、下顎の牙が上顎の皮膚を突き破ることもあ
 る。

 このケースの場合、上下の牙の当たり方に問題があり、外傷性咬合を起こして
 いた。

 とりあえず歯グキに抗生剤の軟膏を挿入し、水で溶け出さないようワセリンを
 塗りつけた。

 後日、歯科用の電気エンジンを持参し、獣医師に牙が強く当たる部分を削合し
 ていただいた。

 おかげで無事、食欲は回復した。

 あの時のカバ、今も行楽客にあくびを楽しませていることだろう。


 

 

私自身、20年以上前に、動物園でキリンの病理解剖をしたことがあります。

しかし当時、キリンの解剖図も見たことがないし、病気を診察したこともないので

飼育員さんにいろいろ質問され、冷や汗をかいたことを思い出しました。

震災と食の話

今回は、私がの好きなコラム、「Dr.オカザキのまるごと歯学」  岡崎 好秀 先生

からの、転用です。

毎回、面白い内容で、歯の重要性についてとてもためになります。
  

 阪神淡路大震災での出来事を紹介する。
 
 ある避難所での出来事である。

 ごみ箱には、弁当のハンバーグがたくさん捨てられていた。

 聞けば、お年寄りの方が捨てられるそうである。

 どうしてハンバーグを捨てるのだろう?

 “食べ慣れていなかった”のか?

 単に“味が濃かった”のか?

 それとも“歯が悪く噛めなかった”のか?

 でも、ハンバーグなら少々歯が悪くても噛めるだろう。

 なぜなら、現代の軟食文化の代名詞のように言われる食物であるからだ。

 しかし・・・である。

 ハンバーグを噛むことができなかったのだ。

 脂は、寒いと硬くなる性質を持つ。

 なるほど!

 他にもおにぎりが凍り、焼きおにぎりにして食べたという話も多い。

 寒い場所では、日頃の常識が覆されるのだ。

 現在、同じことが起こっているのではないかと思うと心が痛む。

 もう一つ、ある被災者から聞いた話を紹介する。

 直後の避難所でのことである。

 初めて届けられた救援物資は、乾パンだった。

 以下、その方の言葉。

 私が乾パンを食べていたら、前にお年寄りが座っていました。

 その方は、パンを口にしようとはしませんでした。

 そこで「まだ、これからどんな事態(余震・大火災)が起こるかわからないか
 ら、無理してでも食べておいた方がいいですよ」と言いました。

 しかし、返ってきたのは「歯が悪いので食べられない」という言葉でし    た・・。

 後で考えると、そういった方から先にダメになっていきました。

 「野生動物は歯を失うと、獲物が取れず命に関わる」と言われる。

 でも人間だけは、別だ・・・と思っていた。

 しかし非常事態では、人間も野生動物の一つに過ぎないのだ。

 歯は、人間にとっても生きていくための武器なのである。

 被災された方々の口の復興をお祈りしたい。

動物歯科の器具

今回は視線を変えて、手術器具についてお話します。

人と違い、ペットの歯科では、様々なサイズの歯科処置を行います。

セントバーナードから、チワワ、猫、ウサギ、フェレットなどなど。

体のサイズが違うと、歯のサイズも違います。
 

その中で、特に抜歯についてお話したいと思います。

歯科を専門的に勉強する以前は(かなり昔ですが)

主に人間用の歯科器具を使って抜歯をしていましたが、

現在では、動物用の歯科器具が、多種販売されています。

自分自身、国内で販売されている、歯科器具は、ほとんど購入しています。

一つの趣味みたいなものでしょうか?

しかし、これが結構奥深いもので、微妙な角度や、長さによって

抜歯処置の確実性と速さを左右します。

もちろん抜歯テクニックは重要ですが、抜歯器具あってのテクニックです。

一部ですが、エレベータ(抜歯を行なうときの器具)を紹介します。

上段の写真は主に猫、下段は犬に使用しています。

同じように見えて、先端の幅が違います。
 


 


 
 

現在では年間100症例近くの歯科処置を行っていますが、

もっと、いい器具があったら、もっと早く手術が終わるのにと思い

新しい歯科器具の作成に、励んでいる所です。

ヒトはどこまで雑食なのか?

今回は、私の好きなブログから紹介します。
 

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀 先生
 

 ヒトの歯は、2種類に分けられる。

 前歯と臼歯である。

 前歯は獲物を捕えるための歯であり、魚類や爬虫類でも存在する。

 一方、臼歯は咀嚼するための歯であり、哺乳類において初めて獲得した。

 さらに、臼歯も2種類に分けられる。

 前臼歯(小臼歯)と後臼歯(大臼歯)である。

 一般に、肉食動物は前臼歯が発達している。

 鋭い歯で、骨まで噛み砕く。

 後臼歯は使わないので退化傾向にある。

 逆に草食動物は、草をすり潰すため咬合面が広く平らになる。

 さてヒトは、鋭い肉食動物と平らな草食動物の歯を重ね持つ。

 だから雑食動物である。

 それではヒトは、どこまで雑食なのか?

 生物の系統から考えてみたい。

 さて生物は、大きく動物界、植物界、菌界の3つに分けられる。

 まず動物界の脊椎動物。

 これは魚類、両生類、爬虫類、哺乳類に代表される。

 哺乳類ではウシやブタ、あるいは魚類のタイやヒラメは日常的に食べる。

 鳥類ではニワトリが代表格である。

 両生類といえば、食用カエルを食べる。

 爬虫類では、スッポン料理が有名だ。

 ワニは、高蛋白・低カロリーで鶏肉の歯ざわりに似ていると言う。

 しゃぶしゃぶもあるし、串焼きもある。

 またワニ料理は、キューバの名物料理である。

 次に無脊椎動物。

 まず節足動物の昆虫。

 昆虫食はゲテモノ食いと思われるが、霊長類は昆虫食からスタートした。

 長野県では、バッタやイナゴ、それにハチの子を食べる。

 ハチの子と聞けば気持ち悪いが、ハチミツだって立派なハチである。

 さらに海に住む甲殻類のエビやカニ。

 それに軟体動物のタコやイカは、寿司ネタに欠かせない。

 さらに、おの足類のシジミやアサリ。

 これは味噌汁の具となるので重要だ。

 次は、植物界。

 種子植物では、キャベツやホウレンソウ。

 これは葉を食べる。

 ニンジンやゴボウ、ダイコンは根である。

 ジャガイモ、タケノコ・セロリとくれば茎であり、バナナ、トマト、カボチャ
 は実である。

 さらにイネ、トウモロコシ、ギンナンは種である。

 シダ植物では、ワラビにゼンマイ。

 これは佃煮やお浸しになる。

 緑藻類では青ノリ、褐藻類はコンブやワカメと続く。

 最後に菌界。

 まず高価なマツタケ。

 それにシイタケやシメジもある。

 これ位か・・・。

 おっと!

 酵母菌もあるではないか。

 ビールの醸造には欠かせないし、パンを作るにも必要だ。

 そう言えばチーズやヨーグルトの乳製品。

 これは乳酸菌。

 納豆も醤油も味噌も、酵母や麹(こうじ)や細菌を利用する。

 発酵食品は、これらの力を利用して作り出す。

 こりゃ雑食動物どころではない、まさにヒトは、生物界すべてを食べつくす
 “完食動物”だったのだ。

サルが最初に食べるのは?

今回は、私の好きなブログから紹介します。
 

□Dr.オカザキのまるごと歯学             岡崎 好秀 先生
 

 「サルの目の前でスイカを割って与えると、どこから食べるだろうか?」

 人間と同じように赤い実か?

 サルは木の葉や樹皮を食べるから皮なのか?

 それとも硬い種から食べるのか?

 どれが正解だろう?

 この問題。

 食育にまつわる講演会で話すと、誰もが興味を持って聞き入る。

 正解は「種」である。

 サルは、まず指で種をほじくって食べる。

 種がなくなった後、赤い実にかぶりつく。

 実はこの話を知ったのは、24年前。

 「人間はなぜ歯を磨くか」(石川 純著 医歯薬出版)に書かれていた。

 その時、これは本当の話なのか確かめたいと思った。

 以来20年間。

 獣医師、生物学者、そして動物園の関係者に会うたびに質問してきた。

 その結果。

 「わからない。」

 「見たことがない。」

 「試したことがない。」

 という回答ばかりで確信を得ることができなかった。

 やっと昨年、始めて「ズバリ!種です。」と答えられた方に出会った。

 北海道 旭山動物園の元名誉園長 小菅正夫氏である。

 さすが旭山動物園を世界一の動物園に仕立てた先生だ。

 その理由。

 「一番栄養があるためです。」

 なるほど!

 スイカの種を考えるから、わからなかったのだ。

 考えてみれば、我々は多くの種を食べている。

 米、トウモロコシ、栗、大豆。

 すべて種である。

 大豆を原料としたものには、味噌、醤油、それに豆腐がある。

 豆腐となれば、厚揚げも湯葉も元は種だ。

 種は、命をつなぐものであるから栄養が豊富なのは当然なのである。

 ところで日本では、種なしスイカを作る研究が行われている。

 種を選り分けながら食べるのは面倒なためだ。

 しかし、中国では種を大きくする研究が盛んという。

 中国では、スイカの種を炒ったものを歯で割って食べる。

 おやつとして食べるのだ。

 そのため中国人は、前歯の先がくぼんでいる方が多い。

 同じ種でも、国が代われば扱いが異なることがわかる。

トケイソウ

 

歯周病に効果 トケイソウの有効成分が組織を再生

トケイソウ(別名パッションフラワー)に含まれる天然成分に、
歯周病によって破壊された歯の周りの組織を再生させる機能があることを、
中部大の禹済泰(ウゼテ)教授(天然物化学)と東京医科歯科大のグループが突き止めた。
歯周病は「国民病」とも呼ばれて患者が急増しているが、効果的な治療薬は少ないだけに、新薬の開発に期待がかかる。

禹教授は、骨粗しょう症の予防や症状改善に応用できる天然物質を研究。
植物からの抽出物を含む3000以上の天然化合物から、骨の形成を促すような物質を探したところ、トケイソウの花や葉に含まれる成分「ハルミン」が、骨のもとになる骨芽(こつが)細胞を増やす効果があることを見つけた。

利点はなんといっても、治療単価が大幅に下がることです。
ペットでの使用は、一般的ではありませんが現在、販売されている、同じような効果の治療薬と重量単価で1/75949ですから確かに安いです。

歯の矯正装置

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀 

 

北京オリンピックが終了した。
今回もっとも活躍した選手の一人に,
男子100メートルで優勝したジャマイカのボルド選手がいる。
両手を広げ駆け抜けたタイムが9秒72。
人類史上最速タイムをたたき出したことは記憶に新しい。
 
また女子100メートルでも,ジャマイカ勢が独占した。
優勝したのは,ブレーザ選手。
ところが彼女を良く見ると歯の矯正装置が入っていた。
歯科医師の眼から見て,歯並びに問題が出る骨格ではなさそうなのに・・。
どうして歯の矯正をしたのだろうか?
矯正をすることで,それだけ成績がアップするものなのか? 
 
さて,ヒトの骨格は左右対称にできている。
どうしてだろう?
その理由を述べてみる。
広い公園でまっすぐに歩いてみる。
ところが,不思議なことに目を閉じて歩くと歩けない。
少し歩くと,いつの間にか左右に大きくずれているのだ。
目で目標物を捕らえているから,まっすぐに歩けることがわかる。
それでは,目を閉じるとどうして歩けないのか?
これは歯の噛み合わせが関係している。
 
例えば,目を閉じて顎を右側に寄せて歩く。
そうするといつのまにか,右に大きく傾いている。
反対の場合でも同様である。
だから歯や骨格は左右対称なのである。
そう言えば,水泳でも背泳の選手は天井のどこかを基準にして泳ぐ。
そうしないと,まっすぐ泳げないで曲がってしまうのだ。
 
話は戻って,ここで大胆な仮説をたててみた。
さて100m走で,第1歩が5度ずれてダッシュすると仮定する。
そうすると計算上では,100m40cm。
つまりその選手は,40cm余分に走らなければならない。
この調子で10度ずれると1.6m,30度では15.5mとなる。
計算は,三角関数のコサインの逆数を求めればよい。
 
さらに100mを10秒で走る選手であれば,5度ずれれば10秒04。
10度では10秒16,30度では11秒55もかかってしまう計算になる。
これでは試合に勝てない。
身体のバランスの悪さが,記録に影響することがわかる。
そこで噛みあわせを調整する必要がある。
 
これは試験勉強を考えればわかりやすい。
例えば平均60点を目指すのであれば,一夜漬けでも取れるだろう。
しかし平均70点を取ろうと思うと,日ごろからよく勉強する必要がある。
それでは常に80点をキープするにはどうだろう?
70点の数倍の勉強量が必要だ。
さらに90点以上では,どうだろう?  
1点アップするための努力は,生半可なものではない。
 
オリンピック競技では,常に人間の可能性の限界に挑戦する。
記録をアップさせるすべての要因を考え試合に臨む。
アメリカでは30年以上前から,
試合の前には歯の噛みあわせを調整していたと言う。
ジャマイカのブレーザ選手にとっても,
一つの可能性が歯の矯正だったに違いない。
 

納豆菌

生活習慣病で日本人の七割に症状があるとされる歯周病治療に天然抗菌物質の納豆菌が効果があることを、歯科医師の研究チームが明らかにした。
 
うがいで使った場合、治療用うがい薬に比べ三倍の効果があったという。
介護の現場では必要な口腔ケアに手が回らない現状があり、「大きな助けになるはず」としている。
 
七施設で四十-六十代の患者計五十四人を納豆菌と治療用うがい薬に分けて一カ月使ってもらい、歯周炎の改善効果を比較した。
 
研究リーダーで宇都宮市の螺良修一さん(42)によると、納豆菌でうがいをした場合、歯周病菌は一カ月で検出感度以下の状態まで減少したという。

そのうち、動物用の納豆健康食品が発売されるのでしょうか?

泣きの予防

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀
 

小児の歯科診療において泣かれるとたい へんです。
患児だけがたいへんなのではなく、私達にとってもたいへんです。
私達まで泣きたくなります。

さて“予防”というと、まず“齲蝕予防”や“歯周病予防”を思い浮かべますが、“泣きの予防”も予防の一つです。
泣きの予防をすることは、診療を楽にするばかりではありまあせん。
信頼関係が築かれ、成人しても来院してくれる患者さんとなります。
さて齲蝕には“原因”があり、その“結果”として発症するのですから、

“処置”のみに目を向けたても、本質的な解決策につながりません。

同じように、泣きについても、その原因を探り整理し、

それぞれの対処法(予防)について考えておくことが重要です。

実際、一度泣き始めると、それを止めることは至難の業です。
だから、泣くか泣かないかギリギリの子を、“どのようにすれば泣かせないですませることができるか?”

を日頃から考えておく必要があります。
さて治療中、大泣きしている時に、こんな言葉がけをすれば、ピタリと泣きやむ魔法の言葉はありません。
泣いてからあわてるより、まず泣くか、泣かないかギリギリのレベルにいる患児を、

どうしたら泣かせずにすむか?という方法を考える方が得策です。
例えば、チェアー上で不用意にライトをつけ、まぶしければ驚いて泣く可能性があります。
だとすればライトは常にお腹に向けてつけ、その後に口の方を照らす習慣をつけます。
こうすると、泣かない可能性が増えます。それでも泣くかもしれません。
でも、このような工夫は1つ1点だとしたら10個あつまれば10点になります。

このようなポケットをたくさんつくることが大切です。
もっと具体的な例をあげてみましょう。

診療室に、今にも泣きそうな幼稚園児が、母親に抱きついて入ってきました。
それを無理に引き離そうとすると、ますます強く抱きつきます。
さらに力ずくで話そうとしたら、泣いて暴れて診療になりません。
ここで、どのようにしたら患児が自らチェアーに上がってくれるでしょうか?
ちょっと考えてみてください。

私は“今日は、まずお母さんに歯を磨いてもらおう!”と言います。
こうすると、患児は安心してチェアーに上がります。
同時に母親にはドクターの椅子に座って、磨いていただきます。

しばらく磨いていただいたら、“サア~ きれいになっているかどうか見せて!”と言って母親と交代します。
そして歯を磨きながら検診を行うのです。
このようにしたら、スムーズな診療が可能です。
これが泣きの予防なのです。
患児が、いつの間にかチェアーに上がってくれるように誘導するのです。

動物病院でも、いかにペットを安心させるか、は苦労するところです。
オヤツのご褒美で、喜んでくれる子もいるのですが。
やはりパピークラスに参加していただくことが一番、良い方法だと思います。

口腔内の汚れとコップの水の汚れ その2

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀
 

前回、口腔内の汚れをコップの水に投影する方法について述べた。

この方法は、診療室での歯みがき指導でも応用できる。
いくら口をすっぱくして言っても磨いてこない子に対しての例を紹介する。

診療室入室時:
術 者「今日は、歯磨きだけにして終わろうか。」
子ども「ヤッタ~!!」

ここで透明コップを用いて歯みがきをさせる。
(但し、水を代えないので、水は濁る。)

水が濁った時点で:
術 者「今日は この水を飲んだら終わりにしょう!!」
子ども「エッー!飲めない!」
術 者「どうして水が飲めないの?」
子ども「汚いから…。」
術 者「なに!飲めない…。先ほどまで口にあったものじゃないか…。」
子ども「飲めん!」

術 者「早く飲んでくれないと 次の患者さんが待っているから…。」
と言って急がせる。

仕方がないので口元にコップを持っていくと・・:

術 者「でも、その水は汚れているから、おなかが痛くなるかもしれない」
と独り言。
子ども:ますます飲めなくなる。
術 者「そういえば!昨日来た子は、水が飲めなかったから、ここで
泊まっていったんだ。」

子どもが泣きそうになる:

ここで泣かせたらダメ! 間髪を入れず…

術 者「わかった!今日だけは特別許してあげる。今度きた時はもし水が
濁っていたら、飲むと約束しょう!このことは、カルテに書いて
おくから…」
子ども:ホッ!と安堵のため息。
術 者:声を出しながら「今度来た時に、もし濁っていたら、水を飲みます。
もし飲めなかったら、泊っていきます。」とカルテに書き、
サインをさせる。

以来この子は、きれいに磨いて来るようになりました。
こんな彼も、立派な社会人になりました。
今でも自分の健康保険証を持って、時々小児歯科を受診しています。

※念のために:この方法は、いくら言っても磨かない子に使うバージョンで、
神経質な子に対しては禁忌であることを申し添えておきま

口腔内の汚れとコップの水の汚れ その1

 Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀 
 

診療室では歯磨き指導の際、歯垢染色液を利用して汚れのチェックを行う。
しかし、家庭ではできない。
そこで染色液の代わりになる方法を紹介する。

まず、透明コップに水を1/3程度入れる。
そして歯磨き剤なしで、コップの水で歯ブラシを洗いながら歯を磨く。
こうすれば水が濁ってくる。
あまり水が濁るようであれば、捨ててまた新しい水を入れる。
これを繰り返し、濁らなくなったらきれいに磨けたと思えばよい。
そう!歯の汚れが、水の汚れに反映されるのだ。
家庭でも出来る簡単な方法である。

さてこれは、仕上げ磨きにも応用できる。
保護者が磨いた後、水を子どもに見せる。
そして「○○ちゃんのお口はこれだけ汚れていたのよ…。ばっちいね…。」
などと繰り返し言っておけば、保護者が磨いてくれる理由が理解できる。
これがわかれば、早くからすすんで磨く子どもになるだろう。
ところで、この濁った水を汚いと理解できるのは何歳くらいだろう?
そんなことを調べてみた。

まず子どもの歯を磨き、濁った水を見せ口に近づける。
そうすると2歳前半の子ども達は、なんと86%もが飲もうとした。
まだこの年齢では、濁った水が汚いことがわからないのだ。(不認知群)
これが2歳後半では44%に減り、顔をそむけるなど態度で示すものが20%、
“イヤ!”などの言葉で拒否する者が36%となる。
そして3歳前半以降、態度や言葉で拒否する者がほとんどとなる。
こんなことからおよそ3歳になったら、汚いことがわかるのだ。
濁った水を見せるだけで、子どもの発達レベルをうかがい知ることができる。

ペットはさておき、私も子供の歯磨きには、とても苦慮したいます。
定期的に歯科医院(お友達のパパ)へ、行くことを嫌がらないため
任せきっています。
歯を磨かない割には、虫歯は一本もなく,うらやましい限りです。
この状態が、いつまで保てるのでしょうか?

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