今週もコラムから | ナス動物病院
今週もコラムから
Dr.オカザキのまるごと歯学 岡崎 好秀
アレキサンダー・フレミングは、ペニシリンを発見したことで
1945年にノーベル医学・生理学賞を受賞した。
1928年、彼はインフルエンザの研究中、ブドウ球菌の培養皿に青カビが混
入し、周囲の細菌の生育が抑制されていた。これがペニシリンの発見のきっか
けとなったのは有名だ。
その6年前の話。フレミングは、もう一つある発見をしていた。ある日、彼は
風邪を引いており鼻水を一滴落とした。すると鼻水の周りに細菌の阻止帯がで
きていたのだ。これがある大発見につながった。
さて彼は、何を発見したのだろう?それは“リゾチーム”である。“溶菌させ
る酵素”の意であり、唾液や涙に多く含まれる。リゾチームは、溶菌や組織修
復を促進させ、口腔内における生体防御作用の最前線の位置をしめている。実
際、乳白色になるほど多くの細菌で濁った懸濁液に唾液を落とすと、またたく
間に溶菌され透明な液になる。
野生動物が、傷口をなめるのもこの作用によるものだ。唾液にはこの他、ラク
トフェリンやIgAなど抗菌物質が含まれる。面白い事にこれらは、すべて安
静時唾液に含まれる。安静時唾液は、皮膚の皮脂腺と同様に体を守る働きがあ
るのだ。例えば、サカナのヌルヌル物質を除去すると、寄生虫が侵入したり、
カビが生える。そういえばリゾチームは、卵白に多く含まれる。どうしてだろ
うか?
実は、卵の殻には無数の穴が開いている。この穴を通じて呼吸をしているのだ。
だから卵を洗えば呼吸ができず死んでしまう。そう!卵の無数の穴からは、細
菌が侵入しようとする。これを防ぐために、リゾチームは卵白に多く含まれる
のだ。昔から“風邪引きには卵酒が良い”と言われるが、これもリゾチームの
効用かもしれない。もっとも、卵白より作られるリゾチームは、卵アレルギー
の人には禁忌である。いずれにせよ、なにげない唾液だが、このような不思議
が隠されていることを知りながら診療をすると面白い。
唾液の性状と歯周病の関連性については
人では昔から研究されているのですが
動物では的確な論文が見つかりません。
いずれにせよ、唾液に含まれる、さまざまな成分が
口腔内を守ってることには間違いありません。