震災と食の話 | ナス動物病院
震災と食の話
今回は、私がの好きなコラム、「Dr.オカザキのまるごと歯学」 岡崎 好秀 先生
からの、転用です。
毎回、面白い内容で、歯の重要性についてとてもためになります。
阪神淡路大震災での出来事を紹介する。
ある避難所での出来事である。
ごみ箱には、弁当のハンバーグがたくさん捨てられていた。
聞けば、お年寄りの方が捨てられるそうである。
どうしてハンバーグを捨てるのだろう?
“食べ慣れていなかった”のか?
単に“味が濃かった”のか?
それとも“歯が悪く噛めなかった”のか?
でも、ハンバーグなら少々歯が悪くても噛めるだろう。
なぜなら、現代の軟食文化の代名詞のように言われる食物であるからだ。
しかし・・・である。
ハンバーグを噛むことができなかったのだ。
脂は、寒いと硬くなる性質を持つ。
なるほど!
他にもおにぎりが凍り、焼きおにぎりにして食べたという話も多い。
寒い場所では、日頃の常識が覆されるのだ。
現在、同じことが起こっているのではないかと思うと心が痛む。
もう一つ、ある被災者から聞いた話を紹介する。
直後の避難所でのことである。
初めて届けられた救援物資は、乾パンだった。
以下、その方の言葉。
私が乾パンを食べていたら、前にお年寄りが座っていました。
その方は、パンを口にしようとはしませんでした。
そこで「まだ、これからどんな事態(余震・大火災)が起こるかわからないか
ら、無理してでも食べておいた方がいいですよ」と言いました。
しかし、返ってきたのは「歯が悪いので食べられない」という言葉でし た・・。
後で考えると、そういった方から先にダメになっていきました。
「野生動物は歯を失うと、獲物が取れず命に関わる」と言われる。
でも人間だけは、別だ・・・と思っていた。
しかし非常事態では、人間も野生動物の一つに過ぎないのだ。
歯は、人間にとっても生きていくための武器なのである。
被災された方々の口の復興をお祈りしたい。