歯の矯正装置 | ナス動物病院

歯の矯正装置

カテゴリーwhatsnew役に立つ歯のお話

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀 

 

北京オリンピックが終了した。
今回もっとも活躍した選手の一人に,
男子100メートルで優勝したジャマイカのボルド選手がいる。
両手を広げ駆け抜けたタイムが9秒72。
人類史上最速タイムをたたき出したことは記憶に新しい。
 
また女子100メートルでも,ジャマイカ勢が独占した。
優勝したのは,ブレーザ選手。
ところが彼女を良く見ると歯の矯正装置が入っていた。
歯科医師の眼から見て,歯並びに問題が出る骨格ではなさそうなのに・・。
どうして歯の矯正をしたのだろうか?
矯正をすることで,それだけ成績がアップするものなのか? 
 
さて,ヒトの骨格は左右対称にできている。
どうしてだろう?
その理由を述べてみる。
広い公園でまっすぐに歩いてみる。
ところが,不思議なことに目を閉じて歩くと歩けない。
少し歩くと,いつの間にか左右に大きくずれているのだ。
目で目標物を捕らえているから,まっすぐに歩けることがわかる。
それでは,目を閉じるとどうして歩けないのか?
これは歯の噛み合わせが関係している。
 
例えば,目を閉じて顎を右側に寄せて歩く。
そうするといつのまにか,右に大きく傾いている。
反対の場合でも同様である。
だから歯や骨格は左右対称なのである。
そう言えば,水泳でも背泳の選手は天井のどこかを基準にして泳ぐ。
そうしないと,まっすぐ泳げないで曲がってしまうのだ。
 
話は戻って,ここで大胆な仮説をたててみた。
さて100m走で,第1歩が5度ずれてダッシュすると仮定する。
そうすると計算上では,100m40cm。
つまりその選手は,40cm余分に走らなければならない。
この調子で10度ずれると1.6m,30度では15.5mとなる。
計算は,三角関数のコサインの逆数を求めればよい。
 
さらに100mを10秒で走る選手であれば,5度ずれれば10秒04。
10度では10秒16,30度では11秒55もかかってしまう計算になる。
これでは試合に勝てない。
身体のバランスの悪さが,記録に影響することがわかる。
そこで噛みあわせを調整する必要がある。
 
これは試験勉強を考えればわかりやすい。
例えば平均60点を目指すのであれば,一夜漬けでも取れるだろう。
しかし平均70点を取ろうと思うと,日ごろからよく勉強する必要がある。
それでは常に80点をキープするにはどうだろう?
70点の数倍の勉強量が必要だ。
さらに90点以上では,どうだろう?  
1点アップするための努力は,生半可なものではない。
 
オリンピック競技では,常に人間の可能性の限界に挑戦する。
記録をアップさせるすべての要因を考え試合に臨む。
アメリカでは30年以上前から,
試合の前には歯の噛みあわせを調整していたと言う。
ジャマイカのブレーザ選手にとっても,
一つの可能性が歯の矯正だったに違いない。