What's New

歯石除去における麻酔の必要性

11.30.11
whatsnew役に立つ歯のお話

簡単にお話しすると、麻酔をかけない歯石除去はありえないというお話です。
 

アメリカ獣医歯科学会
アメリカとカナダでは、獣医師の資格を持たない人が歯科処置を行ったり、監督下で訓練された動物看護士が、獣医のライセンスのない施設で診療行為をすることは、法律で禁じられ、罰則が科せられます。
アメリカでも、訓練を受けていない人、あるいはライセンスを持たない人が、動物に対する口腔内の診療行為を無麻酔で実施することの危険性を以下のように説明しています。
 
1)歯石は歯面に硬く付着しています。歯石を取るためのスケーリングは、超音波スケーラーや音波スケーラー、さらにハンドスケーラーを使って行われますが、ハンドスケーラーの先端は鋭い状態でないと歯石を除去できません。動物がちょっと頭を動かしただけでも動物の口腔粘膜を容易に傷つけるばかりでなく、動物が痛みを感じた反応で、術者を咬むこともあります。
 
2)専門家によるスケーリングとは、歯肉縁の上下を問わず、ついた歯垢や歯石を除去し、歯面を研磨することです。スケーリングで必ずしなくてはならないことは、歯周疾患が活動的であるポケット内(歯肉と歯根の間の歯肉炎直下)の歯面をきれいにすることです。ヒトの場合は患者が協力するので、無麻酔でも口腔内の専門医である歯科医によるスケーリングが可能になるのです。しかし、無麻酔で、犬や猫の一本一本の歯の縁下部のスケーリングは不可能です。目で見える範囲の歯石を除去することは、動物の健康維持にはほとんど効果がなく、きれいにしたような感じがするだけです。単に見た目だけの効果しかありません。
 
3)カフ付きの気管チューブを挿管して吸入麻酔をすることは、3つの重要な利点があります。1つは、手技を理解できない動物を協力的にさせること、2つは検査時や施術中の患部組織の治療に際して発生する痛みを排除できること、3つは誤嚥から気道や肺を守ることです。
 
4)専門的なスケーリング施術時に、口腔内検査は必要不可欠ですが、これは無麻酔では不可能です。特に、舌側の歯面を検査することはできませんし、患部や不快感をもたらすか所を容易に見逃してしまうでしょう。
イヌやネコに安全に麻酔あるいは鎮静処置を施すためには、動物の健康状態を評価し、身体の大きさに合わせて適切な薬用量を決め、継続してモニターする必要があります。
獣医師は、以上のすべての手技に精通しています。獣医師でない者が麻酔薬や鎮静薬を処方することも投与することもとても危険であり、違法です。麻酔は決して100%安全とは言い切れませんが、今現在の一般的臨床医が実施している麻酔技術や健康状態の評価法は、リスクを限りなく小さくしているので、毎年、何百万回の歯科処置を安全に実施できているのです