役に立つ歯のお話

愛犬の歯みがき、定期的に行っているのは なんと3割!

某損害保険株式会社が、6月4日の「虫歯予防デー」にちなんで、
歯みがきに関するアンケート調査を行ったところ、
「定期的に歯みがきを行っている」犬の飼い主は、
全体の31.6%であることがわかりました。

動物病院へのアンケートでは、8割を超える獣医師が
歯みがきを行う理想的なペースとして「毎日」を挙げているのに比較すると
歯みがきを「あまり行っていない」飼い主が6割を超える
今回の結果は、理想と現実の間に
かなりのギャップが存在していることを示しています。

犬の口中は、人間よりもアルカリ性が強く、
歯垢がつきやすいため、歯周病にかかりやすいといわれています。
歯周病を予防するためには、こまめな歯みがきが欠かせませんが、
半数を超える飼い主が「愛犬は歯みがきが嫌い」と答えています。
「好き」と答えた飼い主に共通している方法は、
「手早く行う」「無理やり行わない」ということでした。
これを参考にまずは口の周りを触っても嫌がらないようにする
歯みがきジェル、ガーゼなどを上手に利用するなどして
ひとりでも多くの飼い主に愛犬の歯みがき嫌いを克服してほしいものです。

という内容です。

当院には歯科治療を行なうために、遠方より来院されます。
他の動物病院と比較し、歯の重要性に関心の深いオーナーさんが
多いと思われますが、それでも歯磨きを毎日されている
オーナーさんは2割を割ります。
それだけ毎日のブラッシングはとても大変なことです。
言い換えれば、この2割のオーナーさんは
尊敬に値すると思います。

毎日ではなくても、諦めずに、時にはしてください。
多くのペットは歯ブラシを受け入れません。
それが現実です。
頑張る必要はありません。
気楽に考えましょう。

ハイハイと乳前歯の外傷

 

 Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀 
 
 転んで乳前歯を打ち陥入や脱臼などの外傷は、
 ヨチヨチ歩きを始めた1~2歳児に多い。
 まだ十分、体のバランス機能が育っていないためだろう。
 不思議なことに、同じ子どもが転倒を繰り返し、歯科医院を訪れる。
 さて、前歯の外傷が多発する理由として、転んでもとっさに手が出ないことが
 あげられる。
 しかし、年配の養護教諭は「昔の子ども達は転んだら絶対手が出ていた。」と
 口をそろえて言われる。
 「転んで手が出ないのは、ハイハイが少なくなったため」という説もある。

 それでは、ハイハイが少ないとどうして手が出ないのだろうか?
 こんなことを考えると、小児歯科を志すものとして楽しくなる。
 さて最近、生活の欧米化とともは机やイスが増えたため、つかまり立ちを早く
 するようになったと言われる。
 一方、かつての日本家屋は、畳の生活が中心で、つかまるものがなかったから
 ハイハイが多かった。

 そこでハイハイとつかまり立ちの関係について調べていたら、
 面白いことに気がついた。
 さて読者の方は、「ハイハイ」と「つかまり立ち」では、どちらが先だと思わ
 れるだろうか?
 当然のごとく「ハイハイ!」と答えられると思う。
 ところが・・・だ。
 海外の文献を見ていると、「つかまり立ち」の方が先なのである。
 まさに生活習慣の差が、子どもの発達に影響していることがわかる。
 さて、話は戻る。

 ハイハイが多いと、手が出る理由。
 ハイハイは、顔を前に向け頭を出しながら、手が床についている姿勢である。
 すなわち頭部が、不安定な位置にあるときには、手が前に出ていることがわか
 る。乳児期にハイハイを行う中で、自然にこのような反射が脳に構築されるの
 だろう。だから転ぶ際、頭部の位置が不安定となったとき、瞬間的に手が出て
 顎・顔面が防御される。

 でも、ハイハイの時代は、もう卒業したから、いまさら・・と思われるだろう。
 大丈夫。
 家庭で“おウマさんごっこ”をして遊べばよい。
 これで新たな反射を作り出す。
 とりあえず、ツバを指につけ眉に当てながら、よく転ぶ子どもの保護者に話し
 ていただきたい。

 
 

ヤツメウナギ

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀
 

“ヤツメウナギ”と言っても、ウナギの仲間ではない。
目のうしろに7つのエラ穴があり、目が合計8つあるように見えるので
こう名づけられた。
ヤツメウナギは脊椎動物で最も原始的な種類のひとつで無顎類に属し,
顎関節がなく,円形の口がいつも開いている。
アゴのない魚”として有名である。
口の周囲と舌の上には角質化した歯(角質歯 )があり
これで魚に吸着し,体表に孔を開け,血液を吸い栄養を採取する。
写真はヤツメウナギの口を正面から見た像です。

アゴがないことは、下等な動物を意味している。事実、これより上の脊椎動物
は、すべてアゴを持っている。アゴのある・なしで、さまざまな差がもたらさ
れる。例えば、免疫能。そこでアゴと免疫の進化について述べる。

まずヒトの体は表皮や粘液により、細菌やウイルスから守られている。これは、
物理的な防御作用であり第1のバリアーと言える。これを突破されても、細菌
に対してはリゾチームやマクロファージ、そしてウイルスにはNK細胞が控え
ている。これが第2のバリアー“自然免疫”である。次には、抗原提示細胞や
T細胞、それにB細胞により抗体を作り、それぞれの細菌やウイルスを特異的
に見分け反応し撃退する。さらには、その抗原を記憶し、新たな進入に対して
すばやく・強く反応する。これこそ第3のバリアー“獲得免疫”である。

自然免疫は、生まれたときより体に備わり、広く浅く反応するのが特徴である。
一方、獲得免疫は、生後に得ることで狭く深く効果的に反応する。

さて、ヤツメウナギは“自然免疫”しか持たない。すなわち、抗体を作ること
ができないのだ。しかし、それより上の脊椎動物は、抗体を作ることができる。
この差こそ、進化におけるアゴの獲得と関係が深い。アゴがなければ、限られ
たものしか食べられない。しかしアゴを得れば、歯で獲物に咬みつき、引きち
ぎり食べることができる。そうすると、さまざまな種類の食物を摂取する。栄
養効率は、良くなるだろうが、さまざまな抗原も進入するだろう。そこで、免
疫系が高度化するのである。ヒトは、アゴを獲得し食性が多様化することで免
疫系を進化させてきたことがわかる。

獣医学生は解剖実習のあとに焼肉なんて普通だったのに
ウナギを食べて、食あたりして以来、この系統のものを
体が受け付けません。
ちなみに、なぜかアナゴは大丈夫です。(笑)

なるほど

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀
 

 
寒い日が続いている。
この季節、ちょっとしたことで泣く子が増える。
なかでも一番、泣きにつながりやすい服装がある。
それは、“つなぎの服”である。
続けて、“タ-トルネックのセーター”。
それに“モコモコのジャンバー”
筆者は、この三つがそろった服装を“泣きの服装3点セット”と呼んでいる。
これだけそろうと100%どころか、200%泣かれると思っている。
それでは、どうして“つなぎの服”はよく泣くのだろうか?

さてあなたの今の呼吸。
ゆっくりした規則的で深い呼吸である。
それでは泣きの呼吸はどうだろう?
そう!速くて不規則で浅い呼吸となる。

さて患者さんは、治療時に術者の動きに応じ呼吸を調整している。
口の中を触られている時には、瞬時に息を吸ったり、止めたりしているのだ。

さて、“つなぎの服”を着て、チエアー上で寝ころぶと、
肩ヒモにより胸が締められ呼吸が浅くなる。
そのぶん息を止める時間が短くなり、苦しくて泣き出す確率が高くなる。
ちなみに、通常1回500ccの空気を吸うと、
肺の中に届く有効な空気は350cc程度となる。
ところが速い呼吸では、1回に吸う量が200cc程度まで減ってしまうのだ。

“タートルネック”も首をしめるので呼吸が浅くなりやすい。
また“モコモコのジャンバー”は、室内では暑くなり、
体温の上昇や心拍数の増加につながる。
このことも呼吸に影響する。
だから歯科診療中には、深い呼吸に誘導する配慮が必要だ。
“ジャンバー”は診療前に脱がすようにし、“タートルネック”や
“つなぎの服”は控えるように伝えておく必要がある。
子どもに泣かれて、困るのは術者自身である。
予防には、齲蝕や歯周病予防だけではない。
泣きの予防もりっぱな予防の一つなのである。

最近、ペットに服を着させているオーナーさんが多いのですが
診療の妨げになることが時々あります。
出来るだけ、待合室で脱がせておいてくださいね。

サンタさんのトナカイは雄か雌か?

サンタさんのトナカイは雄か雌か?

サンタさんのそりを引いている8頭のトナカイの性別(雄か雌か)知ってますか?

実はトナカイはシカの仲間で唯一雄も雌も立派な角があります。普通しかの仲
間は雄だけが立派な角で雌には角はありません。カモシカはメスにも角があるじ
ゃないかという人がいるかもしれませんが、カモシカはその名前に反してシカで
はなくウシの仲間なんです(笑)。
 ではサンタさんのそりを引くトナカイの性別がなぜ分かるか? なんと、トナ
カイの雄は秋の終わりから12月中旬までに落角と言って角が落ちてしまいます。
ですからクリスマスのシーズンに角が有るのは雄ではないということになります。
となると雌かということになりますが。妊娠していないメスは3月頃、妊娠して
いるメスは春の出産後の夏頃に角が自然に落ちます。ですから12月の下旬に立派
な角があるトナカイはいないことになります。えっ、答えになってない? 忘れ
てました。いるんです。雄でもない雌でもない去勢されたトナカイは12月のクリ
スマスシーズンに立派な角が唯一あるんです。実際北欧でもソリを引くのは去勢
されたトナカイだそうです。ですから答えは「去勢されたトナカイ」ということ
になります。
 
ちなみにサンタさんのソリを引く8頭のトナカイにはちゃんと名前があるですよ。

●DASHER ダッシャー
●DANCER ダンサー
●PRANCER プランサー
●VIXEN  ヴィクセン
●COMET コメット
●CUPID キューピッド
●DONDER ドンダー
●BLITZEN ブリッツェン

 いかがですか、誰がどこかは聞かないでください。

「噛むだけで!?」進化している機能性ガム

今回は人用のガムの進化について。

最近のガムは、虫歯になりにくいといった効果は当たり前、それだけでなく、
口の中や歯にプラスαの効果が期待できるという機能性ガムが、発売されるようになりました。
これらの機能性ガムには、どんな効果が期待できるのでしょうか?

どうしてガムが歯に良いの?

それは噛むことによって分泌される唾液です。
唾液は、虫歯菌が歯に穴をあける酸性の状態を中和する働きがあります。
さらに溶けてしまった歯の表面を修復する再石灰化という働きもするのです。

歯肉の炎症に効果的なPタイプ

メディシュPタイプ ポータブル14粒 希望小売価格 180円、ボトル 75グラム希望小売価格600円
Pタイプは特に歯周病の炎症に対して、特に効果を発揮する「ラクトフェリン」が配合されているのが特徴です。ラクトフェリンは、人の母乳、特に初乳に多く含まれていて、唾液の中にも含まれています。

一般に歯茎が炎症を起こす原因となっているのが、歯周病菌が出すLPSという毒素です。ラクトフェリンは、このLPSと呼ばれる毒素を解毒する働きがあります。このためこのガムでは、虫歯の予防効果に加え、歯周病の進行抑制効果も期待できるというわけです。

虫歯に効果的なCタイプ

メディシュCタイプ ポータブル14粒 希望小売価格 180円、ボトル 75グラム希望小売価格600円
Cタイプは、特に虫歯の原因となる、プラーク(歯垢)に対して、特に効果を発揮する「デキストラナーゼ」が配合されています。

一般に虫歯の原因となるのは、プラーク(歯垢)です。このプラークは、口をゆすぐだけでは取れないほど、しっかり歯にこびり付いて増殖します。デキストナラーゼという物質は、プラーク中の細菌の連結を弱めるプラーク分解酵素として働きます。

このため、ガムを噛むことで、唾液が酸を中和して、歯の表面の再石灰化を行い、さらにプラークが形成されるのも抑制し、虫歯になりにくいといった効果が期待できるというわけです。デキストナラーゼは、高い歯垢分解効果のため、歯磨き粉などにも配合されています。

これらの機能性ガムは、食後に10分から15分程度噛むとメリットを得やすいと考えられます。

ペットはガムを長い間、噛んでくれないのが
最大の欠点です。

口呼吸と歯周病

今回は口呼吸についてお話します。
「人間以外の哺乳動物は口呼吸をしません」とされていますが
ペットの歯周病にも関係があると思います。

人は鼻で空気を吸って鼻から吐くのが本来の呼吸法です。
なんらかの理由で鼻呼吸がしづらいために、
または習慣(クセ)により口で呼吸をすることを口呼吸といいます。
しゃべるという行為が口呼吸という呼吸を生み出したと考えられてます。

口呼吸が歯に良くないのは唾液に関係してきます。
口の中が乾燥し酸性度が下がる(Ph5.5?5.7以下)になると
歯の表面のエナメル質から
カルシウムやリンが溶け出し虫歯になりますます。
この状態を脱灰といいます。
しばらくすると今度は唾液の力で酸を中和する緩衝作用や
洗い流す浄化作用が行われ
唾液に含まれるカルシウムなどのミネラルが歯に沈着し脱灰部分が修復されます。
この状態を再石灰化と言います。

ヒトは一日、牛乳パックの半分以上、500?600mlもの唾液を分泌します。
唾液に含まれるアミラーゼ、マルターゼ、リパーゼなどの酵素が
消化を助け、血液中の血糖値の上昇を速め食べ過ぎを防止します。
ムロチンは粘り気を出し口の中の粘膜や舌の傷つきを防ぎます。
さらにリゾチーム、ラクトフェリンは細菌の増殖を防ぎ、
ペルオキシターゼはタバコのヤニや肉類コゲなどの発ガン性物質の
発ガン毒性を抑えます。

唾液は虫歯や歯周病を防ぐ大きな力なのですが
口呼吸をしていると、唾液が乾いてしまいます。
唾液の持つすぐれた働きを封じ込めてしまうのです。

リラックスした状態で食事すると、副交感神経が優位に働き、
サラサラの唾液が出ます。
イライラしたりドキドキして感情に起伏があると交感神経が働き
ネバネバになり量も減少し、食事も喉を通りにくくなるのです。

唾液量が多いほど発症予防作用を発揮する力が高まります。
体を守る判断力のない赤ちゃんがダラダラよだれを流しているのは
唾液のすばらしい力があるからなのでしょう。

歯周病と全身疾患

今回は歯周病についてお話します。

歯周病は、さまざまな全身の病気を引き起こします。
これは、あくまでも人の研究結果です。

1.脳梗塞
 重度の歯周病がある場合は、歯周病のない人に比べて
 脳梗塞を発症する危険が高いことが報告されています。

2.低体重児出産 
 重度の歯周病をもつお母さんは、健康なお母さんに比較して 
 低体重児出産の可能性が高くなると報告されています。

3.糖尿病 
 糖尿病が歯周病を悪化させることは以前から報告されてきましたが、
 現在では、歯周病が糖尿病を悪化させるという、相互の影響が指摘されています。
 歯周病の治療をすることで糖尿病患者における血糖コントロールが
 改善されたという報告もされています。

4.誤嚥性肺炎
 高齢者、特に寝たきりの方など体力が減弱している人は、
 嚥下機能も弱っているため、歯周病原菌などが肺に進入して
 肺炎を起こす危険が高くなることが報告されています。

5.細菌性心内膜炎
 お口の中の歯周病原菌は組織に対して付着能力も高いものもあるため、
 心臓の弁やその周囲に感染して心膜炎を起こす危険が高くなることが報告されています。

6.狭心症・心筋梗塞
 重度の歯周病のある人ほど狭心症や心筋梗塞などの冠状動脈硬化による
 心臓疾患になる危険が高くなることが報告されています。

ペットの歯科は十分に研究されている分野ではありませんが
上記のような危険性があると考えられます。
少しでも、そのリスクを減らすにはブラッシングしかありません。
とはいえ、実際に定期的に行なっている方は
当院のオーナーさんでも約1割の方でしょうか。
最近では数々の有効なオーラルケア製品が出ています。
こんな便利なものを使わない手はないと思います。
皆さん頑張りましょう。

今週もコラムから

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀 
 

アレキサンダー・フレミングは、ペニシリンを発見したことで
1945年にノーベル医学・生理学賞を受賞した。
1928年、彼はインフルエンザの研究中、ブドウ球菌の培養皿に青カビが混
入し、周囲の細菌の生育が抑制されていた。これがペニシリンの発見のきっか
けとなったのは有名だ。

その6年前の話。フレミングは、もう一つある発見をしていた。ある日、彼は
風邪を引いており鼻水を一滴落とした。すると鼻水の周りに細菌の阻止帯がで
きていたのだ。これがある大発見につながった。

さて彼は、何を発見したのだろう?それは“リゾチーム”である。“溶菌させ
る酵素”の意であり、唾液や涙に多く含まれる。リゾチームは、溶菌や組織修
復を促進させ、口腔内における生体防御作用の最前線の位置をしめている。実
際、乳白色になるほど多くの細菌で濁った懸濁液に唾液を落とすと、またたく
間に溶菌され透明な液になる。

野生動物が、傷口をなめるのもこの作用によるものだ。唾液にはこの他、ラク
トフェリンやIgAなど抗菌物質が含まれる。面白い事にこれらは、すべて安
静時唾液に含まれる。安静時唾液は、皮膚の皮脂腺と同様に体を守る働きがあ
るのだ。例えば、サカナのヌルヌル物質を除去すると、寄生虫が侵入したり、
カビが生える。そういえばリゾチームは、卵白に多く含まれる。どうしてだろ
うか?

実は、卵の殻には無数の穴が開いている。この穴を通じて呼吸をしているのだ。
だから卵を洗えば呼吸ができず死んでしまう。そう!卵の無数の穴からは、細
菌が侵入しようとする。これを防ぐために、リゾチームは卵白に多く含まれる
のだ。昔から“風邪引きには卵酒が良い”と言われるが、これもリゾチームの
効用かもしれない。もっとも、卵白より作られるリゾチームは、卵アレルギー
の人には禁忌である。いずれにせよ、なにげない唾液だが、このような不思議
が隠されていることを知りながら診療をすると面白い。
 
 

唾液の性状と歯周病の関連性については
人では昔から研究されているのですが
動物では的確な論文が見つかりません。
いずれにせよ、唾液に含まれる、さまざまな成分が
口腔内を守ってることには間違いありません。
 
 

ビールジョッキには11ミリの“カマボコ”がよく似合う

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀
   

さて某県のカマボコ産地での話。都会人が切った、カマボコを一目見て「これ
がでたら箸でどける!」と言い切る人がいる。また地元の主婦も「こんなの出
したら叱られる!」と言う。どうやらこの差は、厚みにあるらしい。横浜で1
00人に、カマボコを切ってもらったところ平均は9.2ミリ。ところが産地
で切ってもらうと11.4ミリ。産地では2ミリ厚く切っている。さて、どう
してだろうか?

そこで大実験。カマボコを7ミリから15ミリの厚さに切り人気投票をした。
その結果、11ミリが圧勝!カマボコのプリプリ感が最高となるのが、この厚
さなのだ。そこで、さらなる実験。カマボコをさまざまな厚さで切り、咀嚼筋
の活動量を調べた。5ミリから10ミリまで運動量が変わらなかったが、11
ミリから急上昇。そして12ミリ以上では、また低下。どうやら11ミリのカ
マボコが、いちばん歯ごたえがあるようだ。さらに脳波までを調べたら、アル
ファ波が良く出たとのこと。11ミリのカマボコを食べることで、恍惚状態に
入ることができる。

さてこの話、誰かに言いたくなるまいか?ジョッキを片手に11ミリのカマボ
コをつまみたくなるまいか?でも歯ごたえは、自分の歯があるからこそ感じる
ことができる。そう考えれば、この話。つまるところ歯の話につながる。歯に
まつわる広報活動も、見習うべき点がたくさんあるようだ。
  
 

ちなみに、イヌやネコは水の一気飲みもできないし
歯ごたえも、あまり関係ない様子。
やはり人間の口は素晴らしい。
 
私のお勧めのカマボコは山口県の白銀です。

食物繊維と歯 その2

食物繊維のほとんどは植物性食品に由来する。そして、水に溶けない“不溶性”
 と“水溶性”の食物繊維がある。今回話題にしたいのは、“不溶性食物繊維”
 である。これは、別名“粗繊維”と呼ばれ野菜のスジなどに含まれる硬い繊維
 のことである。それでは、この繊維は、どうして硬いのだろう?
 
 動物細胞の特徴は、軟らかい細胞膜で覆われていることだ。そして動物には、
 骨がありこれで体を支えている。一方、植物には骨がない。これでは、葉や花
 の重さに耐えきれないし、空に向って伸びることもできない。そこで植物細胞
 は、周りに硬い“細胞壁”を持っている。ちょうど大きな建物の鉄骨と同じで
 ある。
 
 また、動物が果物を食べるときには、種も一緒に飲み込む。種の表面は硬く消
 化できない。だから動物が離れた場所で排泄することで、種子は発芽し子孫を
 残すことができるのだ。このような理由から細胞壁が、不溶性食物繊維として
 体に良いことがわかる。
 
 それでは食物繊維と歯との関係。ある幼稚園で野菜の摂取頻度と齲蝕との関係
 について調べた。その結果、野菜をよく食べる子の乳歯の平均齲蝕歯数は5.1
 歯。一方、ほとんど食べない子は8.1歯であった。野菜をよく食べる子は、
 齲蝕が少ないことがわかる。これは自浄作用のおかげだろう。
 
 それを示唆する別の研究。ネズミにデンプン(14%)と砂糖の混合食を与え
 たら、約70%に齲蝕がみられた。一方、セルロース(14%)と砂糖の混合
 では、40%以下となった。硬い食物繊維をよく噛むことで、齲蝕の発生が抑
 えられることがわかる。
 
 ところで、齲蝕が多いから野菜を食べる事ができないことも考えられる。「歯
 を抜いたら便秘になった。」とか「歯を治したら便秘が治った。」などの話も
 耳にする。なかでも根菜類は、歯がないと食べられない。いくら体に良い食物
 繊維でも、噛まずに飲み込んだら消化不良を起こす。実際に、高繊維食は低繊
 維食に比べ、20回以上噛む回数が増える。すなわち食物繊維の摂取は、噛め
 る歯の存在が重要であったのだ。

 確かにウサギには虫歯はありません。
 しかし最近のウサギは高繊維食(牧草)を食べない環境で育てられています。
 ウサギのオヤツに、ろくなものはありません(ウサギ専門医の話)。
 将来、ウサギにも虫歯が起こるのでしょうか?
 

食物繊維と歯 その1

Dr.オカザキのまるごと歯学 岡崎 好秀
 

 今回から、2回に分けて食物繊維と歯の関係について述べる。
 
 太平洋戦争中、北太平洋のある島での出来事。アメリカ軍が上陸したとき、日
 本の守備隊は森に隠れた。このとき、アメリカ軍は、どの位の日本兵がいるの
 かわからなかった。
 
 そこで、問題1。アメリカ軍は、日本兵の残していった“ある物”を元に、人
 数を推定した。さて“ある物”とは、次のどれだろう?
 1:飯盒(はんごう)
 2:兵器
 3:ウンチ
 正解は、3のウンチの量から予測したどうしてウンチから予想できるのだろう?
 
 アメリカ軍は、自分たちの量を基準にしたために、大きく予想がは
 ずれてしまった。当時の日本人は、穀類を多量に食べていたのでウンチの量が多
 く、約2倍の日本軍がいると予想したのだった。ウンチの量に関する“ウンチク”
 は、もっとある。
 
 昭和30年代。日本に団地ができた時、水洗式のトイレも初めて導入された。そ
 の頃は、トイレの配水管がよく詰まり、団地内で汚物が溢れ出し苦情がでた。そ
 う!これも、排水管の太さをアメリカの基準で決めていたからなのだこのように
 ウンチの量は、食物繊維の量で決まる。食物繊維は“人間の消化酵素で分解され
 ない食品中の成分”と定義されている。例えば、ヒトはセルロースを消化するこ
 とができない。だから、カサを増やせ大腸を刺激することで便通を促し便秘の予
 防となる。諺でも「固い食べ物は軟らかいウンチを、軟らかい食べ物は固いウン
 チをつくる。」と言われる。
 
 さて便秘は、“痔”になりやすくなる。ある肛門外科の先生によると、手術をす
 る前に、食物繊維をたくさん食べるとウンチが軟らかくなり自然に治る可能性が
 あるそうだ。しかし玄米など食物繊維を多く含むものは、硬くて食べにくいので、
 口当たりの良い白米を食べるようになり、摂取量が減少しました。1日の目標値
 は20gであるが、現在ではその70%くらいしか食べられていない。そこで、
 日本では少なかった大腸がんが増加している。
 
 さてかつての栄養問題は、栄養不足をどう解消するかが大問題であった。ところ
 が現代では、過剰な栄養摂取による生活習慣病の予防が問題となっている。そこ
 で、“食べカス”である食物繊維が見直されています。ここまでは、まるで栄養
 学の話・・と思われるでしょう。
 
 次回はこの続きで、食物繊維と歯の関係について述べたいと思う。

 ペットにはあまり関係ない話題かもしれませんが、参考までに。
 

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