ヤツメウナギ | ナス動物病院

ヤツメウナギ

カテゴリーwhatsnew役に立つ歯のお話

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀
 

“ヤツメウナギ”と言っても、ウナギの仲間ではない。
目のうしろに7つのエラ穴があり、目が合計8つあるように見えるので
こう名づけられた。
ヤツメウナギは脊椎動物で最も原始的な種類のひとつで無顎類に属し,
顎関節がなく,円形の口がいつも開いている。
アゴのない魚”として有名である。
口の周囲と舌の上には角質化した歯(角質歯 )があり
これで魚に吸着し,体表に孔を開け,血液を吸い栄養を採取する。
写真はヤツメウナギの口を正面から見た像です。

アゴがないことは、下等な動物を意味している。事実、これより上の脊椎動物
は、すべてアゴを持っている。アゴのある・なしで、さまざまな差がもたらさ
れる。例えば、免疫能。そこでアゴと免疫の進化について述べる。

まずヒトの体は表皮や粘液により、細菌やウイルスから守られている。これは、
物理的な防御作用であり第1のバリアーと言える。これを突破されても、細菌
に対してはリゾチームやマクロファージ、そしてウイルスにはNK細胞が控え
ている。これが第2のバリアー“自然免疫”である。次には、抗原提示細胞や
T細胞、それにB細胞により抗体を作り、それぞれの細菌やウイルスを特異的
に見分け反応し撃退する。さらには、その抗原を記憶し、新たな進入に対して
すばやく・強く反応する。これこそ第3のバリアー“獲得免疫”である。

自然免疫は、生まれたときより体に備わり、広く浅く反応するのが特徴である。
一方、獲得免疫は、生後に得ることで狭く深く効果的に反応する。

さて、ヤツメウナギは“自然免疫”しか持たない。すなわち、抗体を作ること
ができないのだ。しかし、それより上の脊椎動物は、抗体を作ることができる。
この差こそ、進化におけるアゴの獲得と関係が深い。アゴがなければ、限られ
たものしか食べられない。しかしアゴを得れば、歯で獲物に咬みつき、引きち
ぎり食べることができる。そうすると、さまざまな種類の食物を摂取する。栄
養効率は、良くなるだろうが、さまざまな抗原も進入するだろう。そこで、免
疫系が高度化するのである。ヒトは、アゴを獲得し食性が多様化することで免
疫系を進化させてきたことがわかる。

獣医学生は解剖実習のあとに焼肉なんて普通だったのに
ウナギを食べて、食あたりして以来、この系統のものを
体が受け付けません。
ちなみに、なぜかアナゴは大丈夫です。(笑)