歯周病の手術の時期は? | ナス動物病院
歯周病の手術の時期は?
下の画像をご覧ください。
12歳のチワワの頭部のレントゲンです。
今まで、定期的に歯石除去を行っていたのですが、
くしゃみ、鼻水が口臭が収まらないということで、転院されてきました。
よく見ると、下顎の歯槽骨が深くまで吸収され、実際には3mm程度しかありません。
上顎の歯もすべてが動揺していました。
なぜ、このような酷い状態になるかというと、早期に歯周病の歯を抜歯していないからです。
その責任は獣医師にあります。
歯石除去とは、歯石だけを取ることではありません。
私が「なぜ今まで、病院に連れて行かなかったの」と質問すると
決まって返ってくる答えは、「高齢だから、麻酔がかけられない」とか
「自然に抜けるまで、待ちましょう」と
獣医師に言われたので、様子を見ていましたというものです。
「自然に抜けるまで待つ」と言う考えは論外ですが、
一番困るのが、「高齢だから麻酔が危険」と言う理由です。
何歳から高齢だと思っているのかは、人それぞれですが、
癌や歯周病やその他の疾患も、高齢で多く発症するのが当たり前です。
それでも、高齢だからと言う理由で手術しないのでしょうか。
一度でも他の獣医師に「高齢だから手術ができない」と説明されると
その不安感を私が取り去ることは、容易ではありません。
通常、癌や膀胱結石、ヘルニア、子宮蓄膿症は高齢でもすぐに手術を勧めます。
歯科処置に関しては、何故か高齢を理由に手術を勧めない獣医師は極めて多いと思います。
その理由は「すぐに死につながらない」という理由と、
「うまく抜歯ができない」という理由に尽きると思います。
重度歯周病の中には、抜歯だけで完治に至るケースは、とても多いです。
内科療法を続けても、完治しません、進行を少し抑えているだけです。
まず第一に外科手術(抜歯)を考えてください。
その手術による麻酔が極めて危険ならば、内科療法を継続するしかありません。
私が手術をする症例は、10歳から15歳ぐらいの年齢の犬や猫です。
手術前に行う検査は、通常の手術の検査と何ら変わりません。
麻酔の手技も特別なものではありません。
他院にて「高齢だから」と言う理由で、歯科処置を断られたペットたちが集まります。
多くは、病院の紹介と言う訳ではなく、オーナー自らインターネットで検索されて、来院されます。
獣医師の歯科に対する認識・知識のなさが、このような状態を作っています。
ちなみにこの症例は、下顎骨の吸収が極めて激しいために、
下顎歯の抜歯は動揺がある歯のみ抜歯しました。
上顎は全抜歯を行いました。