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ネコの臼歯の疾患

今回はネコの咬合異常のとても珍しい症例です。
 
年齢は生後半年。

写真で示すように、両方の上顎臼歯が常に下顎の歯肉に当たり

歯肉が腫れ上がっています。
 


 

一般的には、抜歯を選択しますが、

もちろん、歯冠切除し修復を行いました。
 


 

歯科テクニックを覚えると、このような状態でも術後の痛みもなく対処できます。

あくまでも抜歯は最終手段です。

切歯の破切

今回の症例は、7歳の日本犬です。
「切歯に触れると痛がる」ということで来院されました。

見た目には、普通なのですが
 


 

実は
 


 

歯頚部から、破折していました。

歯頚部の吸収がないことから、外傷による破折と診断しました。

レントゲンで根尖病巣が確認されたため、抜歯しました。

震災と食の話

今回は、私がの好きなコラム、「Dr.オカザキのまるごと歯学」  岡崎 好秀 先生

からの、転用です。

毎回、面白い内容で、歯の重要性についてとてもためになります。
  

 阪神淡路大震災での出来事を紹介する。
 
 ある避難所での出来事である。

 ごみ箱には、弁当のハンバーグがたくさん捨てられていた。

 聞けば、お年寄りの方が捨てられるそうである。

 どうしてハンバーグを捨てるのだろう?

 “食べ慣れていなかった”のか?

 単に“味が濃かった”のか?

 それとも“歯が悪く噛めなかった”のか?

 でも、ハンバーグなら少々歯が悪くても噛めるだろう。

 なぜなら、現代の軟食文化の代名詞のように言われる食物であるからだ。

 しかし・・・である。

 ハンバーグを噛むことができなかったのだ。

 脂は、寒いと硬くなる性質を持つ。

 なるほど!

 他にもおにぎりが凍り、焼きおにぎりにして食べたという話も多い。

 寒い場所では、日頃の常識が覆されるのだ。

 現在、同じことが起こっているのではないかと思うと心が痛む。

 もう一つ、ある被災者から聞いた話を紹介する。

 直後の避難所でのことである。

 初めて届けられた救援物資は、乾パンだった。

 以下、その方の言葉。

 私が乾パンを食べていたら、前にお年寄りが座っていました。

 その方は、パンを口にしようとはしませんでした。

 そこで「まだ、これからどんな事態(余震・大火災)が起こるかわからないか
 ら、無理してでも食べておいた方がいいですよ」と言いました。

 しかし、返ってきたのは「歯が悪いので食べられない」という言葉でし    た・・。

 後で考えると、そういった方から先にダメになっていきました。

 「野生動物は歯を失うと、獲物が取れず命に関わる」と言われる。

 でも人間だけは、別だ・・・と思っていた。

 しかし非常事態では、人間も野生動物の一つに過ぎないのだ。

 歯は、人間にとっても生きていくための武器なのである。

 被災された方々の口の復興をお祈りしたい。

臼歯の破折

今回は修復不可能な破折症例を紹介します。

破折部位は第4前臼歯で、1番よく起こるところです。
 


 
 
 
 


 
臼歯が完全に縦割れを起こし、 修復が不可能と判断しました。

このような場合、遠心根のみを残すことは可能ですが

抜歯を選択しました。

犬歯の修復

今回は、犬歯の修復についてお話します。

 

 

犬の口腔内トラブルで多いものに「破折(はせつ)」と「咬耗(こうもう)」があります。「破折」は外部の力によって歯が折れてしまうこと、「咬耗」はものを噛む時に歯と歯や、歯と硬いものがこすれあい、歯の表面(エナメル質や象牙質)が磨り減ることを言います。

咬耗は犬歯をはじめ多くの歯で見られます。

老化によって徐々に起きる場合もありますが、硬いものを噛んだりし、サッカーボールやテニスボールを長期間、咬み続けた結果、多くの歯が咬耗してしまった例もあります。
 

今回の症例は、ゲージの中に入れると、金網を咬んでしまう、俗に言うゲージバイトのワンちゃんです。

破折や咬耗によって歯髄が露出すると、強い痛みがするとともに、そこから雑菌が侵入し、新たなトラブルを引き起こします。歯髄が露出してしまった場合は治療が必要です。

 

 
 

レントゲン検査により、根尖部に病巣が認められないので

修復を行いました。
 

私の愛用品

今日は私の愛用している、歯科関連の器具の紹介です。

動物歯科で一番厄介なのは、歯のレントゲンを撮ることです。

皆さんが、見たことのある大きいレントゲンで頭部の評価は出来ますが

歯の評価をするためには、小さなフイルムを口の中に入れるために、

麻酔をかけてレントゲン撮影をすることが、前程となります。

人間のように、一度に180度のパノラマレントゲンを、撮るわけにもいかず

動物種によって、口の大きさも大きく違うため(ハムスターから大型犬まで)

1枚から数十枚もの歯科レントゲンを撮影します。

そこで活躍するのが、デジタルレントゲンです。

撮影して、数秒で確認でき、評価の精度が上がりました。
下の写真では、猫の口の中にある、黒い板です。
 


 

もう1つは、歯科用の拡大鏡です。

特に小型の動物に有用です。
 

動物歯科の器具

今回は視線を変えて、手術器具についてお話します。

人と違い、ペットの歯科では、様々なサイズの歯科処置を行います。

セントバーナードから、チワワ、猫、ウサギ、フェレットなどなど。

体のサイズが違うと、歯のサイズも違います。
 

その中で、特に抜歯についてお話したいと思います。

歯科を専門的に勉強する以前は(かなり昔ですが)

主に人間用の歯科器具を使って抜歯をしていましたが、

現在では、動物用の歯科器具が、多種販売されています。

自分自身、国内で販売されている、歯科器具は、ほとんど購入しています。

一つの趣味みたいなものでしょうか?

しかし、これが結構奥深いもので、微妙な角度や、長さによって

抜歯処置の確実性と速さを左右します。

もちろん抜歯テクニックは重要ですが、抜歯器具あってのテクニックです。

一部ですが、エレベータ(抜歯を行なうときの器具)を紹介します。

上段の写真は主に猫、下段は犬に使用しています。

同じように見えて、先端の幅が違います。
 


 


 
 

現在では年間100症例近くの歯科処置を行っていますが、

もっと、いい器具があったら、もっと早く手術が終わるのにと思い

新しい歯科器具の作成に、励んでいる所です。

乳歯抜歯

乳歯の抜歯について、よく質問を受けます。

いつ頃、乳歯を抜いたらいいのか?というものです。

乳歯の抜歯時期としては6ヶ月を目安としています。

犬種や成長状態によって、多少の違いはあります。

この時期は、避妊・去勢手術の時期とも重なるため、

避妊・去勢手術のついでに、乳歯抜歯をお勧めしています。

乳犬歯の抜歯程度であれば、1本2分程度です。

歯の崩出状態によっては避妊・去勢手術を遅らせることもあります。

大切なのは、その乳歯を抜く必要があるか、確認することです。

そのためには、術前のレントゲン検査が必要です。

乳歯は抜いたけど、その下に永久歯が無かったなんてミスにならないためです。

以下の写真は、乳歯抜歯を行なったものです。
  


 

ここまで乳歯が残ることは少ないですが
乳歯遺残は普通に見られる状態であって

特別ではありません。

乳歯は早めに抜いてあげましょう。

歯の修復

今回は歯の修復に関係した症例を紹介します。
この症例は、歯石除去と乳歯抜歯のために来院されましたが
検査の結果、上顎第4全臼歯の破折が見つかりました。
破折の時期がわからないので、レントゲンで精査し、可能であれば保存を希望されました。
 

そのときの画像です。
2枚目の画像は、破折部位を取り除いた後の様子ですが、

表面には多量の歯石が付着していました。

ということは、かなり前に破折が起こったということになります。  
 
 


 


 

このような場合、処置方法としては

①抜髄後に修復する。

②抜歯する。
の選択となります。

 

人では相当な理由(重度の歯周病など)が無い限り、当然のように抜髄して修復を行いますが

ペットの場合、経済的、技術的な面を考えて、当たり前のように抜歯になります。

特に臼歯の抜髄は、歯科臨床の中でも、とても難しい処置になります。

全国でも対応できる病院は非常に少ないと思います。
 

今回は犬の年齢が若いこと、経済的な余裕のあるオーナーさんでしたので

抜髄後、修復を行いました。

次の写真は、表面の歯石を取った様子です。

出血が確認され、露髄していることが確認されました。
  


 

次は、処置前の確認のレントゲンです。

歯周病巣は確認できず、保存可能と判断しました。
 


 

修復後の写真です。
 


 

今後は定期的なレントゲンでの確認が必要になります。

歯の発育障害

最近、よく見かけるのが歯の発育障害です。
人間のように、笑顔を気にする必要がないので
歯の本数が、多くても少なくてもさほど問題にはなりませんが
場合によっては、処置の必要性があります。
 
今回、紹介するのは犬歯の埋没。
現状では何の問題もありません。
 


 


 


 

レントゲン検査では立派な犬歯が確認できます。
最近では超小型犬種が人気を集めています。
体は小型化していても、歯の大きさは、それに伴っていません。
その辺のギャップが、このような障害を生み出しているのでしょうね。

その辺は、小顔の子供が増えた現代社会と同じですね。

今後の経過観察が必要です。

猫の口内炎

今回は現在、治療中の猫の口内炎の症例を紹介したいと思います。
 

年齢は10歳、エイズウイルスが陽性

過去、数年間、口内炎に悩まされ、主治医にてステロイドを中心とした

内科療法を行われていたようです。

最近ではステロイドの効果が薄れてきたということで、抜歯を検討されていました。

オーナーさんは、病気への理解度が高く、全臼歯抜歯を行なうことになりました。
 

写真は術前の様子です。

手術、1週間前にはステロイドの投与を行いましたが

歯と接触している部分が大きく腫れあがり、簡単に出血してしまいます。

ステロイドによる効果はありません。
 


 


 


 

手術は犬歯以外の歯をすべて抜歯することから始めます。

その後、炭酸ガスレーザーにより、赤く腫れている部分を蒸散し、治癒を早めます。

レーザー照射により、早期の痛みの緩和が期待できます。

次の写真は術後の写真です。
 


 

黒くなっている部位は蒸散を、赤い部位の表面もレーザー照射をしています。

術後2日間、入院、点滴を行い、その後、自宅にて経過を見ました。

次の写真は、1週間後の写真です。

無麻酔で口を開けても、大丈夫。
 


 

どうですか、この回復力の凄さ。

ちなみに、この子はエイズウイルスが陽性です。

全ての猫たちが、このように劇的に回復しませんが、7割以上の確率で良くなることは確実です。

こんなネコちゃんを診察していると、抜歯がいかに重要か伝えたくなります。

犬歯の破折修復

今回は大型犬の犬歯の破折の症例を紹介します。

破折の原因は不明ですが、これだけのサイズの犬歯の破折はあまり起こりません。

破折後、時間の経過はありましたが、年齢が若いということ、経過が悪ければ抜髄処置

を行う条件で、歯髄の保存療法を行いました。
 


 

写真のように、中心部が露髄しており、歯の変色が見られます。

このままの、位置での修復は感染、破折が起こるために、

肉眼的に歯髄が健康である位置まで、切削し歯冠の短縮を行いました。

その後、レーザーで歯髄を蒸散し、歯冠修復を行いました。
 


 

この症例では5ミリ程度、歯冠をカットしています。

破折から、治療までの期間が短ければ、確実に歯を残すことが可能です。

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