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ネコの歯頚部吸収病巣

5月に入り、診察までの待ち時間が非常に長くなっています。

ご了承ください。
 

今回はネコの病気としてはとても多いケースです。

写真を見て、どこが変かわかりますか?
 


 

お分かりになれば、相当の歯科通ですね。

次のレントゲンをどうぞ。
 


 

レントゲンを見れば、一目瞭然ですね。

正常なのは、真ん中の歯だけです。

左右の歯は既にかなり解けていて、歯肉が覆っています。

典型的な、歯頚部吸収病巣の画像ですね。
 

このように、一見なんでもないように見えて、かなり重症なんて歯科の世界では

よくあることです。

ちょっと口腔内を診て、大丈夫なんてなかなか言えません。

ちなみに、この仔は痛みはありませんでした。

 
処置としては、抜歯もしくは歯冠切除(厳しい条件付)になります。

歯の修復

4月に入り、狂犬病注射やフィラリアなどの予防が始まりました。
特に日曜日は非常に込み合い、長い時間お待ちいただくことになります。
ネコちゃんや、歯の相談などの一般診療はできるだけ日曜日を避けてください。
よろしくお願いします。
 

今回はイヌの臼歯の修復の症例です。
かなり前に破折した臼歯の抜髄・修復を行ないました。
 
 
 
 

 

この後は通常通りの、修復を行ないます。

このような、重度なケースは、今後の歯肉炎の発症や

根尖病巣の定期的な観察が必要です。

歯科レントゲン

教科書でも載っていそうな、歯周病の画像です。
 

歯周病の手術の時期は?

下の画像をご覧ください。
12歳のチワワの頭部のレントゲンです。
今まで、定期的に歯石除去を行っていたのですが、

くしゃみ、鼻水が口臭が収まらないということで、転院されてきました。
 


 

よく見ると、下顎の歯槽骨が深くまで吸収され、実際には3mm程度しかありません。

上顎の歯もすべてが動揺していました。
 

なぜ、このような酷い状態になるかというと、早期に歯周病の歯を抜歯していないからです。

その責任は獣医師にあります。

歯石除去とは、歯石だけを取ることではありません。

私が「なぜ今まで、病院に連れて行かなかったの」と質問すると

決まって返ってくる答えは、「高齢だから、麻酔がかけられない」とか

「自然に抜けるまで、待ちましょう」と

獣医師に言われたので、様子を見ていましたというものです。

「自然に抜けるまで待つ」と言う考えは論外ですが、

一番困るのが、「高齢だから麻酔が危険」と言う理由です。

何歳から高齢だと思っているのかは、人それぞれですが、

癌や歯周病やその他の疾患も、高齢で多く発症するのが当たり前です。

それでも、高齢だからと言う理由で手術しないのでしょうか。

一度でも他の獣医師に「高齢だから手術ができない」と説明されると

その不安感を私が取り去ることは、容易ではありません。
 

通常、癌や膀胱結石、ヘルニア、子宮蓄膿症は高齢でもすぐに手術を勧めます。

歯科処置に関しては、何故か高齢を理由に手術を勧めない獣医師は極めて多いと思います。

その理由は「すぐに死につながらない」という理由と、

「うまく抜歯ができない」という理由に尽きると思います。
 

重度歯周病の中には、抜歯だけで完治に至るケースは、とても多いです。

内科療法を続けても、完治しません、進行を少し抑えているだけです。

まず第一に外科手術(抜歯)を考えてください。

その手術による麻酔が極めて危険ならば、内科療法を継続するしかありません。
 

私が手術をする症例は、10歳から15歳ぐらいの年齢の犬や猫です。

手術前に行う検査は、通常の手術の検査と何ら変わりません。

麻酔の手技も特別なものではありません。

他院にて「高齢だから」と言う理由で、歯科処置を断られたペットたちが集まります。

多くは、病院の紹介と言う訳ではなく、オーナー自らインターネットで検索されて、来院されます。

獣医師の歯科に対する認識・知識のなさが、このような状態を作っています。
 
ちなみにこの症例は、下顎骨の吸収が極めて激しいために、
下顎歯の抜歯は動揺がある歯のみ抜歯しました。
上顎は全抜歯を行いました。

犬の下顎骨嚢胞

今回は下顎骨嚢胞の症例について紹介します。
 

小型犬に時々見受けられる症例で、歯肉に膨らみができてきます。

一見、腫瘍を疑う感じですが、レントゲンを撮ると、骨が吸収していて
袋状になっていて、内部に埋没歯(ないこともあります)と液体の貯留が認められます。

処置としては、早期に外科的に埋没歯の除去と内側の袋を丁寧に切除することです。
 


 
 


 
 

一方の下顎の歯槽骨が大きく吸収されているのが、確認できます。
下顎骨の吸収は重度ですが、骨折には至っていませんでした。

ネコの歯肉の腫れ

今回は、1年前に、犬歯の脱落とともに、歯肉の部分が大きく腫れあがり、

他院での診察にて、腫瘍を疑った症例の報告です。

精査を求めて、来院されました。

初診では、1年前より腫れがひき、犬歯部分の軽度の膨隆が認められました。
 


 
 
次は、麻酔下による歯科レントゲン画像です。
 


 

下の犬歯の根尖が完全に残っていて、先端部周辺が黒く抜けています。

明らかに、周囲病巣が起こっている証拠です。

歯槽骨を削って、抜歯処置を行いました。
 


 

なぜ犬歯が破折したかわかりません。

外傷もしくはネックリージョンによるものと思われます。

ネコの犬歯の内歯瘻

このホームページに感心を持って頂いて、有り難うございます。

今回は日常の診察で時々観察される、内歯瘻について紹介します。

簡単に説明すれば、歯の根元に感染を起こり、膿がたまり

膿の逃げ場所がなくなり、歯肉に穴が開いてしまう病気です。
 


 

このネコの場合は、事故により犬歯が折れてしまい、

数年後に、内歯瘻になってしまいました。

治療は歯を残したいのであれば抜髄して修復

もしくは抜歯となります。
 

ちなみに、私も去年、内歯瘻になりました。

原因は10年以上前の虫歯治療の失敗です。

レントゲンで確認したところ、

抜髄処置の時に、ファイル(歯髄腔を掃除する針)が折れて残っていたようです。

まさか、今になって内歯瘻なんて?

思わず、以前通院していた、歯科医の先生の顔が浮かびましたが

今となっては、かかりつけの病院で治療中です。

歯石除去における麻酔の必要性

簡単にお話しすると、麻酔をかけない歯石除去はありえないというお話です。
 

アメリカ獣医歯科学会
アメリカとカナダでは、獣医師の資格を持たない人が歯科処置を行ったり、監督下で訓練された動物看護士が、獣医のライセンスのない施設で診療行為をすることは、法律で禁じられ、罰則が科せられます。
アメリカでも、訓練を受けていない人、あるいはライセンスを持たない人が、動物に対する口腔内の診療行為を無麻酔で実施することの危険性を以下のように説明しています。
 
1)歯石は歯面に硬く付着しています。歯石を取るためのスケーリングは、超音波スケーラーや音波スケーラー、さらにハンドスケーラーを使って行われますが、ハンドスケーラーの先端は鋭い状態でないと歯石を除去できません。動物がちょっと頭を動かしただけでも動物の口腔粘膜を容易に傷つけるばかりでなく、動物が痛みを感じた反応で、術者を咬むこともあります。
 
2)専門家によるスケーリングとは、歯肉縁の上下を問わず、ついた歯垢や歯石を除去し、歯面を研磨することです。スケーリングで必ずしなくてはならないことは、歯周疾患が活動的であるポケット内(歯肉と歯根の間の歯肉炎直下)の歯面をきれいにすることです。ヒトの場合は患者が協力するので、無麻酔でも口腔内の専門医である歯科医によるスケーリングが可能になるのです。しかし、無麻酔で、犬や猫の一本一本の歯の縁下部のスケーリングは不可能です。目で見える範囲の歯石を除去することは、動物の健康維持にはほとんど効果がなく、きれいにしたような感じがするだけです。単に見た目だけの効果しかありません。
 
3)カフ付きの気管チューブを挿管して吸入麻酔をすることは、3つの重要な利点があります。1つは、手技を理解できない動物を協力的にさせること、2つは検査時や施術中の患部組織の治療に際して発生する痛みを排除できること、3つは誤嚥から気道や肺を守ることです。
 
4)専門的なスケーリング施術時に、口腔内検査は必要不可欠ですが、これは無麻酔では不可能です。特に、舌側の歯面を検査することはできませんし、患部や不快感をもたらすか所を容易に見逃してしまうでしょう。
イヌやネコに安全に麻酔あるいは鎮静処置を施すためには、動物の健康状態を評価し、身体の大きさに合わせて適切な薬用量を決め、継続してモニターする必要があります。
獣医師は、以上のすべての手技に精通しています。獣医師でない者が麻酔薬や鎮静薬を処方することも投与することもとても危険であり、違法です。麻酔は決して100%安全とは言い切れませんが、今現在の一般的臨床医が実施している麻酔技術や健康状態の評価法は、リスクを限りなく小さくしているので、毎年、何百万回の歯科処置を安全に実施できているのです

重度の歯周病

歯周病の手術を行うときに、「何本ぐらい抜きますか?」と質問を受けます。

この返事が、とても難しいことなのです。
 

当然、歯は骨の中に埋まっています。

実際、見た目だけでは判断できず、

歯科レントゲンを撮らないと何もわかりません。
 

人の歯科医院でも、まず最初に口腔内のレントゲンを必ず撮ります。

これにより、今までの治療歴・歯周病の程度・埋没歯や

過去の歯科治療の失敗など、簡単に確認できます。

それほど、歯科レントゲンの依存度は高いのです。

そうなると、極端な話「1本から20~30本ぐらい抜歯かな?」

と答えざるおえません。
 

今回は、最初から下顎の犬歯以外すべて抜歯を予定した頭部のレントゲンを紹介します。
下顎の骨が歯周病により、骨折が起こるぐらい吸収されているのが確認できます。
 

 

 

猫の口腔内腫瘍

今回は猫の口腔内疾患の症例を紹介します。

猫の重度口内炎は、ヘルペス・エイズ・白血病ウイルスなどのウイルス関連や、

細菌、腫瘍、原因不明(自己免疫疾患など)さまざまな原因があります。

その中で、初期腫瘍は、普通の口内炎と見間違えることがあります。

ある程度経過すると、いかにも悪そうな顔をしますが、時に歯槽骨に進入し

発見が遅れることもあります。

疑わしい場合、病理検査と歯科レントゲンが必要です。
 

今回は扁平上皮癌の写真を紹介します。
 

 
今回は病理検査のため腫瘍を切除後、レーザー蒸散、患部抜歯後、縫合をして、検査結果を待ちました。
 

  
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口腔内に現れる腫瘍はメラノーマ・線維肉腫・扁平上皮癌など高確率で超悪性の腫瘍です。

種類によって、動向は違いますが、大悪党に間違えありません。

遺伝子操作で「緑色に光る猫」、エイズ治療に道

今回はウイルスの話題を1つ紹介したいと思います。

私は大学当時(20年以上前ですが)ウイルス学研究室に所属していました。

その当時、ネコエイズウイルスが発見され、話題になりました。

あれから、猫エイズワクチンが開発されるのに、20年以上の歳月がかかりました。

基礎研究は非常に時間がかかるものだと、改めて思いました。
 

米国の研究チームがこのほど、遺伝子操作により、

猫のエイズを引き起こす猫免疫不全ウイルス(FIV)に耐性のある細胞を持った

「緑色に光る」猫を生み出した。
  

科学誌「ネイチャー・メソッズ」に11日掲載された今回の研究では、

FIVを抑える働きを持つサルの遺伝子を猫の卵母細胞に注入し、その後受精させた。

加えて、遺伝子操作を行った部分を容易に判別できるよう、クラゲの遺伝子も組み入れた。

これにより遺伝子操作された細胞は緑色を発色する。
その結果、遺伝子操作された卵母細胞から生まれた猫の細胞を採取したところ、

FIVへの耐性を示したという。
また、これらの「耐性」を持つたんぱく質は、猫の体内で自力で作られていた。

また、遺伝子操作した猫同士を交配させたところ、

生まれた8匹の子猫にも操作された遺伝子が引き継がれていた。
 


 

 

カバの大あくび

今回は私のお気に入りのコラムから。

□Dr.オカザキのまるごと歯学          岡崎 好秀 先生
 
 カバは、水の中に住む草食動物である。

 日中は水中に潜み、夜間になると上陸しエサを食べる。

 一見すればおとなしそうに見えるが、神経質で凶暴な動物である。
 
 アフリカでは、カバに襲われ死亡する者が後をたたない。

 ところで、カバは大きな口を開けている光景を目にする。

 これを見て“カバの大あくび”と揶揄される。

 おかげでむし歯予防週間には、各地の動物園でカバの歯磨きが行われる。

 ところでカバは、どうして大あくびをするのだろう?

 実はこれ、威嚇行動の一種である。

 カバは、縄張りをおかされると、相手に攻撃をしかけるのだ。

 面白いことにカバ同士の争いは、どちらが大きな口を開けるかにかかってい
 る。

 大きな口を開けた方が勝ちなのである。

 負けた方は、口を閉じ。

 勝った方は、さらに大きな口を開ける。

 なんと150度も開くという。

 だから動物園の行楽客に口の中を見せることは簡単とのこと。

 雄のカバの目の前で手を上げると、負けじと大きな口を開ける。

 手を上げている間は、口を開け続けるのでじっくり観察できるのだ。

 さて、そのあくびも大きな牙を見せつけるためのものである。

 牙を見せる事で、己の強さを強調している。

 最初は小さな口だが、クチビルをまくりあげると同時に牙をむき出し、口を開
 く。

 そうすると歯が飛び出すように見える。

 大きな口を開けることで、互いが傷つく争いを避けているのだ。

 さて動物園の動物は、食欲が低下すると、口の中に問題があることが多い。

 数年前、獣医師から依頼され某動物園へカバの往診に行った。

 カバの口をよく診ると歯グキが腫れていた。

 カバの前歯や牙(犬歯)は無根歯であり、生涯歯が伸び続ける。

 このため歯が適度に摩耗しないと、下顎の牙が上顎の皮膚を突き破ることもあ
 る。

 このケースの場合、上下の牙の当たり方に問題があり、外傷性咬合を起こして
 いた。

 とりあえず歯グキに抗生剤の軟膏を挿入し、水で溶け出さないようワセリンを
 塗りつけた。

 後日、歯科用の電気エンジンを持参し、獣医師に牙が強く当たる部分を削合し
 ていただいた。

 おかげで無事、食欲は回復した。

 あの時のカバ、今も行楽客にあくびを楽しませていることだろう。


 

 

私自身、20年以上前に、動物園でキリンの病理解剖をしたことがあります。

しかし当時、キリンの解剖図も見たことがないし、病気を診察したこともないので

飼育員さんにいろいろ質問され、冷や汗をかいたことを思い出しました。

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