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ネコの口内炎の手術後

先ほどの症例の術後のレントゲンです。

残根の確認を行ないました。
切歯・犬歯以外の歯をすべて抜歯しています。

口内炎における、全額抜歯の有効性は70パーセントというデータが出ており
個人的にも、非常に有効な手段だと思います。
しかし、30パーセントは外科処置のみでは完治できず内科療法との併用が必要となります。

ネコの口内炎

当院での歯科疾患に関する患者さんは、遠方から来られる方が多く
ホームページを確認されてから、来院されます。
またオーナーさんは、歯に関しての重要性を認識されているので
非常にスムーズに治療を受け入れてもらえます。
私としても、とても嬉しいことです。

ウサギの症例も多く、掲載したいのですが
口が小さくて、なかなか綺麗な写真が写せません。

そこで今回は先日診察した、ネコの口内炎の重症例を紹介します。

このネコは4歳という年齢でありながら、重度の口内炎を発症しており
内科療法(ステロイド・インターフェロン)でも改善が見られないので
相談に来られました。

口腔内を観察すると(痛がって開口してくれませんが)口腔内全体に
激しい潰瘍が見られ、かなりの疼痛を伴っていました。
触ると簡単に出血がおこります

この結果を受けて、全額抜歯を選択しました。

写真は抜歯前の様子です。

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歯周病(処置後)

口腔処置直後のレントゲンです。

抜歯後の歯槽骨がボコボコになっているのが良く確認できると思います。

下顎の犬歯は、かろうじて温存できそうです。

食事には、全く支障はありません。

今後の口腔内の管理が絶対に必要です。

とはいえ、残された歯は2本だけなので、歯磨きも簡単です。

同じワンちゃんに思えないですね。

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歯周病(処置前)

今回は先日行なった、歯周病の症例を紹介します。

7歳のダックスフンドンの女の子。

7歳にしてほとんどの歯が、重度の歯周病に侵されていました。

4本の犬歯も骨吸収が重度です。

ダックスフンドンは、全体の歯科治療の半数を占めます。

それほど、口腔内の疾患の侵されやすい犬種だと考えられます。

今回は、解り易いように、処置前と処置後のレントゲン写真をアップします。

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ウサギの歯の疾患

かなり、春らしい気候になってきましたが、いかがお過ごしですか。
忙しくて、ブログの更新が、遅れてしまいました。
今回はウサギの不正咬合によって起こる
1症例を紹介します。

●顎骨膿瘍
切歯・臼歯の不正咬合は、歯は口の中に向かって伸びるだけでなく、
歯の根が上顎や下顎に向かっても伸びてしまいます。
反対向きに(下顎骨や目の方に向かって)伸びてしまった歯は
そこで感染・炎症を起こし、膿瘍を作ります。
うさぎの膿は時間がたつとチーズ状に固くなってしまうため、
見た目には、デキモノのように見えます(写真)。
上顎に膿瘍が出来てしまった場合、固くなった膿が眼球を押し出し、
眼球が突出してしまいます。

治療は、異常な歯を抜くこともありますが、うさぎの顎骨は非常にもろく、
抜くときに骨折を起こしやすいことや、血管の分布が豊富なために出血が多い、
歯を抜いた穴から感染を起こしやすい、
痛みから結局食餌がとれないなどの欠点があるため、
治療の選択が限られます。
基本的には膿瘍を摘出したり、切開・洗浄と抗生物質の投与を中心とした治療が行われます。
しかし完治するには長期間に渡ることもあり、
膿の貯留を繰り返してしまうこともある
非常に厄介な病気です。

4月から狂犬病のワクチン接種やフィラリアの予防が始まります。
皆さんには、後日、お手紙が届くと思います。
よくご覧になってください。

後日ブログにもアップします。

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ウサギの避妊手術

今回はウサギの避妊手術について。

ウサギのオーナーさんは、ご存知かもしれませんが
ウサギのメスは、子宮腺癌になりやすく(5才以上で約50%との報告)
若いうちに避妊手術をさせておくことが推奨されています。
一方で、気管チューブが使用困難、心拍低下を開腹させる薬が効きにくい
ストレスに弱いなど、麻酔においてのリスクが
犬猫よりもかなり高い動物です。

もちろん、当院ではウサギの歯科処置の症例の方が
圧倒的に多いのですが、麻酔に関しては全く同様です。

ウサギで避妊手術を希望される場合、そのへんを理解した上で、
手術の選択をしていただくことになります。
しかし、子宮腺癌(5才以上で約50%)の確率の高さから考えると
手術を推奨します。

写真は先週行なった避妊手術で撮影したものです。
ウサギの正常子宮です。

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ヤツメウナギ

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀
 

“ヤツメウナギ”と言っても、ウナギの仲間ではない。
目のうしろに7つのエラ穴があり、目が合計8つあるように見えるので
こう名づけられた。
ヤツメウナギは脊椎動物で最も原始的な種類のひとつで無顎類に属し,
顎関節がなく,円形の口がいつも開いている。
アゴのない魚”として有名である。
口の周囲と舌の上には角質化した歯(角質歯 )があり
これで魚に吸着し,体表に孔を開け,血液を吸い栄養を採取する。
写真はヤツメウナギの口を正面から見た像です。

アゴがないことは、下等な動物を意味している。事実、これより上の脊椎動物
は、すべてアゴを持っている。アゴのある・なしで、さまざまな差がもたらさ
れる。例えば、免疫能。そこでアゴと免疫の進化について述べる。

まずヒトの体は表皮や粘液により、細菌やウイルスから守られている。これは、
物理的な防御作用であり第1のバリアーと言える。これを突破されても、細菌
に対してはリゾチームやマクロファージ、そしてウイルスにはNK細胞が控え
ている。これが第2のバリアー“自然免疫”である。次には、抗原提示細胞や
T細胞、それにB細胞により抗体を作り、それぞれの細菌やウイルスを特異的
に見分け反応し撃退する。さらには、その抗原を記憶し、新たな進入に対して
すばやく・強く反応する。これこそ第3のバリアー“獲得免疫”である。

自然免疫は、生まれたときより体に備わり、広く浅く反応するのが特徴である。
一方、獲得免疫は、生後に得ることで狭く深く効果的に反応する。

さて、ヤツメウナギは“自然免疫”しか持たない。すなわち、抗体を作ること
ができないのだ。しかし、それより上の脊椎動物は、抗体を作ることができる。
この差こそ、進化におけるアゴの獲得と関係が深い。アゴがなければ、限られ
たものしか食べられない。しかしアゴを得れば、歯で獲物に咬みつき、引きち
ぎり食べることができる。そうすると、さまざまな種類の食物を摂取する。栄
養効率は、良くなるだろうが、さまざまな抗原も進入するだろう。そこで、免
疫系が高度化するのである。ヒトは、アゴを獲得し食性が多様化することで免
疫系を進化させてきたことがわかる。

獣医学生は解剖実習のあとに焼肉なんて普通だったのに
ウナギを食べて、食あたりして以来、この系統のものを
体が受け付けません。
ちなみに、なぜかアナゴは大丈夫です。(笑)

なるほど

Dr.オカザキのまるごと歯学           岡崎 好秀
 

 
寒い日が続いている。
この季節、ちょっとしたことで泣く子が増える。
なかでも一番、泣きにつながりやすい服装がある。
それは、“つなぎの服”である。
続けて、“タ-トルネックのセーター”。
それに“モコモコのジャンバー”
筆者は、この三つがそろった服装を“泣きの服装3点セット”と呼んでいる。
これだけそろうと100%どころか、200%泣かれると思っている。
それでは、どうして“つなぎの服”はよく泣くのだろうか?

さてあなたの今の呼吸。
ゆっくりした規則的で深い呼吸である。
それでは泣きの呼吸はどうだろう?
そう!速くて不規則で浅い呼吸となる。

さて患者さんは、治療時に術者の動きに応じ呼吸を調整している。
口の中を触られている時には、瞬時に息を吸ったり、止めたりしているのだ。

さて、“つなぎの服”を着て、チエアー上で寝ころぶと、
肩ヒモにより胸が締められ呼吸が浅くなる。
そのぶん息を止める時間が短くなり、苦しくて泣き出す確率が高くなる。
ちなみに、通常1回500ccの空気を吸うと、
肺の中に届く有効な空気は350cc程度となる。
ところが速い呼吸では、1回に吸う量が200cc程度まで減ってしまうのだ。

“タートルネック”も首をしめるので呼吸が浅くなりやすい。
また“モコモコのジャンバー”は、室内では暑くなり、
体温の上昇や心拍数の増加につながる。
このことも呼吸に影響する。
だから歯科診療中には、深い呼吸に誘導する配慮が必要だ。
“ジャンバー”は診療前に脱がすようにし、“タートルネック”や
“つなぎの服”は控えるように伝えておく必要がある。
子どもに泣かれて、困るのは術者自身である。
予防には、齲蝕や歯周病予防だけではない。
泣きの予防もりっぱな予防の一つなのである。

最近、ペットに服を着させているオーナーさんが多いのですが
診療の妨げになることが時々あります。
出来るだけ、待合室で脱がせておいてくださいね。

犬猫にもがんのPET診断

最近の気になる話題を紹介します。

犬猫にもがんのPET診断 放射性物質使用へ規則改正

人間ではがんの早期発見の手段になっている陽電子放射断層撮影装置(PET)
よる診断を、犬と猫にも実施可能にする方針を決めた。
5月までに、必要な放射性の医薬品が使えるよう獣医療法の施行規則を改正する。

PETを使ったがん検診を受けるには、少なくとも10万円近くかかるとみられるが、
ペットが身近になるにつれて人間同様の高度医療の適用を求める声が高まっているのを受けた措置。
ワクチンなどの普及で感染症が減り、ペットが長生きになってがんが増えていることも背景にある。

答申は、放射性物質のフッ素18をがんの標識薬とするPETの診断を犬、猫で容認。
周囲の人間の被ばくを考慮し、標識薬の投与後、24時間は退院させないとした。

早期発見し、早期治療。
ペットの世界もここまで来ました。

口腔内腫瘍

今回は犬の口腔内の腫瘍について、簡単にお話します。

口腔内の腫瘍は乳腺腫瘍、皮膚腫瘍、肥満細胞腫についで4番目に多い腫瘍です。

よく見られる腫瘍として、
悪性腫瘍では、悪性黒色腫、扁平上皮癌、線維肉腫、
良性腫瘍では歯肉腫(エプリス)です。

これらの腫瘍の性格は、それぞれ大きく異なり、
見た目だけでは確定診断はできません。
性格が大きく異なるゆえに、腫瘍によって手術の大きさや方法、
他の治療法やインフォームドコンセントは大きく変わってきます。
よって、口の中にしこりがあった場合、しっかりとした診断のもと、
適切な治療を行わなければなりません。

・悪性黒色腫

口腔内の腫瘍の中での発生は多く、局所浸潤、転移性がともに高く、
適切な切除・放射線治療が行われた場合でも最終的には遠隔転移を起こし、
予後不良となることが多い腫瘍です。

・扁平上皮癌

口腔内の悪性腫瘍のうち、適切な治療により
根治する可能性が最も高い腫瘍です。
腫瘍の発生する部位によって悪さが異なり、口の先端に近いほど治しやすく、
喉の奥の方に行くほど予後不良になります。

・線維肉腫

口腔内の悪性腫瘍うち、転移性は低いですが、
局所浸潤がとても強い腫瘍です。
転移性が低いゆえに、局所の病変をどうするかが大切です。

・歯肉腫(エプリス)

腫瘍でないという人もいますが、臨床的に腫瘍として対応します。
適切な治療でそれほど困ることはないですが、中には、しっかりした治療をしないと
治らないものもあります。

・線維腫性エプリス、骨性エプリス
切除のみでほぼ良好なものが多いです。

・棘細胞腫性エプリス
臨床的に最も大切なエプリスです。
しっかりと奥(歯槽骨レベル)まで切除しないと、よく再発を起こします。
大きく骨まで浸潤した場合には、
顎骨の切除が必要になることもあります

このように、口腔内腫瘍といっても、さまざまな種類があります。
どちらにしても、早期発見・早期切除・病理検査です。

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皮膚型リンパ腫

治療7日後の写真です。
とても綺麗になりました。
写真が小さくて申し訳ありません。

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皮膚診断の難しさ

1月というのに、暖かい日が続きますね。
いかがお過ごしですか?
1月19・20日は学会のため休診日です。

今回は皮膚病の症例についてお話します。

このイヌは4ヶ月以上前から、背中・お腹・肛門周囲などを痒がるということで
他院にてお薬を処方されましたが、ぜんぜん治らないということで
紹介で遠方より来院されました。

初診では痒み・フケが激しく、全身が赤くなっていました。
腹部には硬結も観察されました。
市販のシャンプーを頻用していたこともあり
よく目にする膿皮症を疑い、いつもの皮膚検査を行ないました。

ところが、皮膚生検(細胞を取って検査することです)を行なって
治らない原因がわかりました。

なんと皮膚型のリンパ腫という悪性度が非常に高い皮膚ガンでした。
リンパ腫は珍しい皮膚病です。
臨床でお目にかかることが少ない皮膚病です。
しかし治療を行なわなければ、全身に転移し1~3ヶ月で死に至ること
一般的な制癌剤の効果がないなど、とても予後が悪いガン
に分類されています。

このガンには一般的な制癌剤が効かないことから
海外ではロムスチンというお薬が使用されています。
この薬は、日本未発売ですぐに入手できませんが
幸運なことに、友人の獣医師がこの薬を使用しており
当日、投薬することが出きました。
今後の経過に期待したいと思います。

このように、たかが皮膚病でも診断が遅ければ
死に至る病気もあります。
皮膚疾患の初期には同じような病変が見受けられるため
鑑別診断がつかないことも、あります。
なかなか治らない皮膚病には要注意です。

(さらに…)

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